お金の面でメリットが大きい軽自動車だけに「BEV軽」の普及は大丈夫? 下取り価格の安さという決定的なハードル (2/2ページ)

軽BEVが爆発的に普及する可能性はまだ低い

 ただ、同じ軽自動車でもBEVとなると少々話が異なってくるようだ。

 2024年秋に日産サクラの中古車が目立って増えてきた。サクラは2022年デビューなので、補助金交付を受けていると名義変更はまだできない。つまり、売却することはできないのだ。話を聞く限りでは、補助金による縛りがなくなる4年後になると再販価値の下落が目立つためになかなか乗り換え促進活動もできないと販売現場が判断し、当然補助金は未経過分返還しなければならないのだが、理解あるサクラユーザーを対象に、4年を待たずにデイズやルークス、あるいはノートなどICE車への乗り換えをすすめているという。

 2025年10月に正式発売となったN-ONE e:は、すでに在庫をもっているディーラーも現れており、仮に工場へ発注しても1~2カ月で出荷可能な状況となっているようである。

 このような様子を見る限りでは、サクラもN-ONE e:も、ICE軽自動車のような再販価値を高めに長く持続するというのは、現状では厳しいように見える。登録車サイズのBEVですら押しなべて再販価値が同クラスICE車より低いことは否めず、ドイツ系高級車ブランドなどでは中古車を買って乗ったほうが買い得感は高いと、中古車をすすめられるほど。

 軽自動車は薄利多売が大原則なので、このまま軽自動車規格も含めてBEVが増えていくなか、政府の補助金の予算枠が伸び悩めば、「BEVを購入したけれど、予算消化をしてしまい補助金を受けられない」ということも珍しくなくなるのではないかともいわれている(現政権は消極的にも見えるので)。

 また、前述したダウンサイザーは、興味を示して軽自動車規格BEVへの乗り換えも期待できるが、軽自動車のメインユーザーとなる年配層や現役子育て層にどこまでメリットをアピールできるかが不透明となる。電気代が安い、給油の手間が省ける(軽自動車はタンク容量が小さいので給油頻度も多い)といった日常使用のメリットはあるものの、充電設備の増設や、そもそも車両価格の割高感が目立ってしまっているのが実情だ。また、残価率の高さで残価設定ローンに活路を見出すこともなかなか難しい。

 ICE軽自動車をラインアップしているブランドは、「BEVがダメならICEへ」という販売促進活動ができてしまうので、まずは軽自動車自体初参入となるBYDのお手並み拝見となるが、政府や地方自治体のバックアップをどこまで引き出すことができるかも、今後の普及を大きく左右していきそうである。


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小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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