表舞台に立つことはなかったがVWの進化を支えた
GラーダーはのちにゴルフRで1.2~1.3バールまで過給圧が上げられていますが、当時は開発途上だったこともあり、おとなしい数字だったのかと。それでも、テストドライバーによれば、ポロⅡスプリントは「穏やかなアンダーステアだったポロがドリフトしながらコーナーから出てくるマシンに変貌した」と証言。この際、フロントのストラット式サスペンションは最小限の変更にとどまったものの、リヤのトーションビームは大幅なチューンアップが施されたとのこと。ブリスターフェンダーを見てもわかるとおり、トレッドがかなり拡大され、大パワー&高荷重に対応したものとなっているようです。
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ところで、社内研究というわりに、インテリアの作りこみは手が込んでいます。それこそ5ターボの前衛デザインには及ばないものの、ビビッドなカラーリングのレカロシートや内張はフォルクスワーゲンらしからぬカジュアルテイスト。一方で、ミッドシップといえどもリヤにベンチシートを装備したのは実利をないがしろにしないフォルクスワーゲンらしい心配りかもしれません。
もっとも、ザイフェルト博士によれば4人乗りミッドシップを実現するためにフラット4エンジンを選んだみたいなコメントもあります。いずれにしろ、5ターボがライバル説はこのあたりで説得力を失いそうです。
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ポロⅡスプリントは、研究用に5台が作られ、そのあとは1台がミュージアムに収蔵され、残りは廃棄処分となった模様。それでも、アンチスキッドやトラクションコントロールシステムの開発ベースとしてさまざまな実験に供され、チーフエンジニアのユルゲン・ニッツは「このスプリント・プロジェクトのおかげで、VWのシャシーは10年のアドバンテージを得られた」とコメントしています。カリフォルニアのカスタムコンテストに出てきそうなマシンではありますが、実際は影の実力派だったというわけです。