こんなクルマ出していいの? 車格に見合わぬバケモノエンジンを搭載したクルマ7選 (1/2ページ)

車体サイズに見合わぬエンジンを搭載した激速モデルも存在

「分相応」という言い方がある。実力、能力に相応した「何か(対象物)」であることを指す意味と解釈してもよいだろうか。この表現、自動車に置き換えてもあてはまる言い方だ。車体サイズや重量、装備、言い替えれば「車格」に対する動力性能、つまりエンジン性能の関係がこれにあたるだろう。

 当たり前の話だが、自動車メーカーが車両を企画する際、エンジン性能は車体側の条件(重量、サイズ、装備など)に見合った数値で設定される。試乗インプレッションでよく目にする「(車体に対し)必要十分な動力性能」という状態だ。ある意味、抽象的な表現かもしれないが、要は、ドライバーがクルマを走らせる際、感覚的に納得できる加速性能や速度性能を備えているということだ。もう少し言えば、運転操作(アクセル開度)に対して、速からず、遅からず、といったクルマ側の反応である。

 クルマを移動の手段と見なし、実用の道具と考えれば、ドライバーの操作感覚に見合った動力性能は、重要な要素と言ってよいかもしれないが、クルマには「走らせる楽しさ、操る楽しさ」といった趣味性の一面があり、加速性能や最高速性能に優れることは、ドライバーに満足を与える要素として、歴史的にクルマの商品性を大きく左右してきた部分でもある。生産車のエンジンをチューニングしてパワーを上げる手法が、クルマを趣味と捉える人たちに、代々引き継がれてきたことも、まさにこうしたことを裏付けるものだ。

 もちろん、市場にこうした傾向が強くあることは、自動車メーカーも百も承知。モデルの車種構成をおこなうにあたり、標準仕様に対してエンジンメカニズムに手を加え、性能を引き上げたスポーツモデルを用意するのはすっかり定着した歴史的な手法となっているが、ときおり、メーカーが格違いのエンジンを積むモデルを設定して市場の度肝を抜くケースがある。たとえば、本来は2リッタークラスのモデルなのに、そこに3リッター級のエンジンを積み込んでしまう車両づくりである。

1)日産キャラバンGT

 日本メーカーがこうした車両づくりをおこなうようになったのは、難関の排出ガス規制をクリアし、なおかつモータリゼーションが熟成してきた1980年代に入ってからで、最初に動いたのは日産だった。1988年、同社のワンボックスワゴン最上級モデル、キャラバンシリーズ(E24型)に3リッターV6エンジンを積む「キャラバンGT」を設定したことがことの始まりだった。振り返ればバブル経済のまっただなか、すべてが上昇志向にある時代のことだった。

 2リッター直4エンジン(Z20型、105馬力)が最適エンジンと考えられていたキャラバンに、セドリック/グロリアシリーズ用のVG30E型をワゴン用に最適化(155馬力)して搭載。文字どおりのGTワゴンの誕生で、高速性能が大幅に引き上げられる大変貌を遂げていた。このキャラバンGTの登場は衝撃的で、市場はもちろんライバルメーカーからも「これは掟破り、マイッタ」の声が聞かれたほど大胆な商品企画だった。

2)三菱RVR-X3/シャリオ・リゾートランナーGT

 同じ掟破りという意味では、三菱がRVカーのRVR、シャリオに搭載したターボエンジンも凄まじかった。やはり2リッタークラスの120〜130馬力エンジンが適切と思われていた車両に、ランサー・エボリューションで使われていた4G63型DOHCターボを搭載。その後長らくランエボの主力エンジンとして活躍する4G63型は、世界最強の2リッターターボと呼ばれたほど強力なエンジンである。

 三菱は、このエンジンをRVカーの性格に合わせて再チューニングを施し、RVR-X3(1994年)、シャリオ・リゾートランナーGT(1995年)として登場させたが、それでも230馬力の超ハイパワー仕様。超快足RVカーとしてマニアの人気を集めることに成功。なお、このエンジンは、三菱が新世代SUVとして2001年に発売したエアトレックにも搭載され、ターボRのグレード設定(2002年、240馬力)で商品化されたが、RVR、シャリオ、エアトレックともすべて4WD方式と組み合わせた点に特徴があった。

3)メルセデス・ベンツ500E

 車体に見合わぬ大排気量エンジンの組み合わせは、洋の東西を問わず、クルマ好きにとってはたまらない魅力で、謹厳実直で知られるあのメルセデス・ベンツも商品化を手掛けたほどだった。モデルはミディアム・クラス、バランスと作りの良さで定評のあったW124系におばけエンジンを積むモデルを登場させた。直4で2.2〜2.3リッタークラス、直6で3.2リッターまでをカバーしていたW124の排気量レンジに、4バルブDOHCの5リッターV8を搭載する500E(1991年)を企画。まさかと思われる車両づくりだった。

 車体製作の一部をポルシェ社が請け負うことでも話題となったが、同社の500SL(R129型)と同じエンジンを積む500E(330馬力)は、ベンツの上級感、高質感が品質を裏支えするかたちとなり、またたく間にスピードマニア層を魅了。のちにE500と名称を変えるが、アウトバーンの超高速セダンGTとしてその座を不動のものにしていた。


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