この記事をまとめると
■トルクステアとはトルクの変動でハンドルの左右の手ごたえが変わる状態を表す
■FF車でよく起こる現象で左右非対称の構造がその原因だ
■メカニズムやシステムの進化で最近のクルマでは軽減されている
トルクステアってなんだ?
トルクステアとは、トルクの影響を受けるステアリングということで、ハンドル操作をしながらアクセルペダルを踏みこんだり、戻してエンジンブレーキが働いたりしたとき、ハンドルの左右の手ごたえが違う状況を指す。
要は、両手で握っているハンドルの、左右にかかる力加減に差が出るということだ。このとき、ハンドルをしっかり握っていないと、ハンドルを取られたほうへクルマは進路を大きく変えてしまう。
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この症状は、とくに横置きエンジンを搭載するFF(フロントエンジン・フロントドライブ)車で起こりやすい。
理由は、エンジンを横置きに搭載すると、それに続く変速機(トランスミッション)や差動装置(デファレンシャル)の配置が車体中心から左右どちらかへズレ、前輪(駆動輪)に駆動力を伝えるドライブシャフト(駆動軸)の長さが、左右で異なってしまうためだ。
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本来は、左右の駆動輪に同じ回転力(トルク)を伝えるのが基本だ。しかし、横置きエンジンでは、それをしたくても、エンジンはもちろん、トランスミッションやデファレンシャルを左右対称に載せられない。最終的に左右のドライブシャフトの長さが違えば、タイヤへ伝えられるトルクにも差が出る。
それが、とくに出力変化の大きくなりがちな加速やエンジンブレーキのかかる減速のとき、ハンドルに影響を及ぼす。強く症状が出た場合は、ハンドルを取られ、狙ったほうへクルマが進まなくなる。それを抑えるには、力強くハンドルを握って運転者が制御するしかない。
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トルクステアは主にFF車で、アクセル操作によって出る症状なので、高性能エンジンを搭載したFF車ではトルクステアが出やすく、それを制御する腕力も必要で、サーキット走行など高出力を連続で発揮させる場合は腕が上がらなくなってしまうほど疲れることも珍しくなかった。
しかし、たとえばホンダのシビックタイプRなどは、300馬力以上のガソリンターボエンジンを搭載するが、よほどの限界走行でなければトルクステアを感じにくい仕上げになっている。
かつて、1980年代に販売されたホンダ・シティ ターボ II、通称ブルドックは、110馬力のガソリンターボエンジンだったが、急加速をさせるとクルマがどこへ行ってしまうのか戸惑うほど、トルクステアの影響が出て制御の難しいクルマだった。
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エンジンを横置きにする以上、トルクステアはなくなるわけではない。しかし、対策を講じることは行われていた。たとえば長い方のドライブシャフトを2分割にしたり、中央に重りを組み付け余分な振動を抑えたり、さらには、電子制御で姿勢を安定させることができる時代になると、トルクステアが起きそうになる場面でブレーキを活用し、左右の駆動輪で適正な駆動力が発揮されるよう調整するといったことができるようになった。
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対処療法ではあるが、策を講じることで、タイプRのような高性能FF車も比較的容易に運転を楽しめるようになっている。
それでも、一般の道はサーキットのコースのように高い水準で路面が整備されているとは限らず、路面の劣化や傷みがある。また、雨天での排水を目的に路面は排水溝側へ傾斜している。そうした路面の凹凸や傾斜が、タイヤの接地状態に影響を及ぼし、左右のタイヤでグリップや荷重が異なることが考えられ、その場面では、やはりトルクステアが生じる可能性はある。
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運転が容易になったから安心、安全ということではなく、路面など外的影響でトルクステアが生じるかもしれないという可能性を常に頭の隅にもちながら、運転を楽しむのがいいだろう。