この記事をまとめると
■ジャガーXJの新世代デザインとして生み出された「ケンジントン」は不採用となった
■そのデザインは韓国の大宇から「レガンザ」として市販化された
■さらに初代アリストとの類似も議論を呼ぶ存在となった
幻となったジウジアーロデザインのジャガー案
ワンソフト・マルチユース、平たくいえば一石二鳥ということになりますが、ジョルジェット・ジウジアーロほど要領よく二鳥を、いや三鳥を得たデザイナーはいません。なにしろ、ジャガーに提案したプロポーザルがボツになったとみたら、韓国の大宇に提案し、見事採用を勝ち取ったばかりか、そもそもはレクサス向けのデザイン案だったというね(笑)。もっとも、カロッツェリア界隈では表面化しづらいだけで、じつはあるあるストーリーだったりするようです。
ジウジアーロがジャガーの要請で新世代XJのスタイリングをしはじめたのは、1980年代も終わりかけたころのこと。それまでのジャガーXJといえば、空力やら板金工の手間暇などお構いなしの「伝統的」モデルでした。が、ライバル他社がこぞってモダンで効率的、しかもスタイリッシュなクルマをリリースしはじめたころですから、さすがに焦らないわけがありません。そこで、ジウジアーロに「XJの伝統を引き継ぐジャガーらしいスタイリング」を注文したのです。
ジャガーXJ(シリーズ1)のフロントスタイリング画像はこちら
ジウジアーロの仕事に詳しい史家によると、当時としては破格の契約金が支払われたとのこと。もちろん、腕によりをかけて張り切ったジウジアーロは「歴史的な規範から解放されたXJ」というコンセプトを掲げたといいます。これは、従来の3ボックスセダンからの脱却を目指したもので、ジャガー社内ではやろうとしても「伝統」が邪魔をして、なかなかチャレンジできなかったといいます。
こうして、1990年にジウジアーロはコンセプトカー「ジャガー・ケンジントン」を完成させました。ジャガー伝統のルーツを再構築するために、フロントエンドは4つのランプを廃し(ほかのジャガーモデルに似たスロット型グリルはアイデンティティとしてキープ)、リヤスタイルはこれまでのXJのボートテールを再考したほか、デッキを大幅に短縮しつつ、フェンダー間の距離を短縮。流れるようなルーフラインに加え、楕円形のウインドウガラスはマイルドでありつつ、ケンジントンをはっきりと高級車に仕立て上げたのでした。
ジャガー・ケンジントンのフロントスタイリング画像はこちら