スペックVが誇る走りに全力のガチ装備
最後にメカニズム。ここがこのスペックVの真骨頂! ……といいたいのだが、じつはエンジン自体はそれほど特別ではない。なんせ、2008年のマイナーチェンジ時に5馬力だけ高められた485馬力という最高出力は、ベースモデルのそれと同じだからだ。「それじゃちょっと仕様が違うだけかよ!」となりかねない。しかし、スペックVには飛び道具が用意されていた。それが、ハイギヤードブーストスイッチだ。
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このスイッチは、トランスミッションがRモードかつMT操作時のみ機能するもので、ステアリング右手側のスイッチ押すと80秒間、過給圧が上がり最大トルクが上昇するという秘密兵器。馬力が上がるのではなくトルクがアップするというシステムで、ドライバーはスイッチを入れた瞬間、後ろから蹴っ飛ばされたような感覚に襲われる。
このスイッチを押すと、「ノーマルから+50馬力かそれ以上は追加されたような感覚がする!」との声もある。しかし、数値上でトルクは約60kg-mから約62kg-mと、2kg-m程度しか上がらないとか。
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80秒だけ使えるとのことで、筑波サーキットはもちろん、ナショナルサーキットレベルでも、使い方を工夫すればタイムアタック時に大きな武器になるに違いない。なお、80秒経過すると自動的に切れ、次に使えるのは80秒のインターバルを挟んだあとになる。
一説には、当時国土交通省から「500馬力を超える市販車なんか出すんですか? 本当に?」と遠まわしにイチャモンをつけられたので、苦肉の策でこうしたスイッチを採用したとかなんとか……。まるでロボ系アニメやカースタント系映画に出てきそうな機能をもつスイッチだけに、操作時の高まりはまさに劇中の主人公かもしれない。
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それとこのスペックVを語る上で欠かせない重要なパーツが、NCCB(Nissan Carbon Ceramic Brake)の存在だ。これは要するに、まだこの時代それほど一般的ではなかったカーボンブレーキシステムで、ブレンボとの共同開発品。レースシーンからフィードバックを得たパーツなのだが、価格がとんでもない。
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まずシステム全体で500万円以上相当といわれている点もそうだが、このなかでもカーボン製のブレーキローターとブレーキパッドが、セットで470万円もするという。どちらも消耗品なので、ライフが長いとはいえ乗り続けていると、いずれこの高額なパーツ代がかかるとなると恐ろしい。なお、当時の資料では、日産から「フェラーリFXXのブレーキの半額程度です」といわれている。そういわれても……。
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ちなみにカーボン化でどれくらい軽くなるかというと1輪あたり5kg程度だとか。なので1台で20kgの軽量化につながる。「これだけの金額をかけてたった20kgの軽量化?」と思うかもしれないが、一説には「バネ下重量を1kg軽量化すると、バネ上重量10kgの軽量化に相当する」ともいわれているので、理論上はバネ上200kgに相当することになる。そう考えたらこの効果は相当なものだ。
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ほかにも、専用となるRAYS製の鍛造ホイールを採用しているほか、専用のビルシュタイン製ダンパーを採用する。なお、こちらは通常モデルには備わっている減衰力調整機構はオミットされている。これにより、インパネ下部にあるサスペンション制御用のスイッチは、先のハイギヤードブーストスイッチのメインスイッチに置き換わっている。そのほかにも、メンテナンス項目が通常モデルよりも多く、より精度が求められていた。
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主な変更点を挙げるだけでも、これだけ専用パーツが備わっていたR35GT-R スペックVの価格は、ベースモデルが約861万円だったのに対し、驚愕の1575万円であった。しかし、ブレーキ代だけでトータル500万円以上ともいわれていただけに、ある意味バーゲンプライスだったのかもしれない。
実際、最終モデルのR35GT-Rは約1444万円から展開されていたので、そう考えるとむしろ安いまである(当時R35GT-Rの新車価格がこれだけ上がるとは考えられていなかったと思うが……)。
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このスペックV、世の中にどれだけ出たのか公式の数字は不明だが、月産30台程度とされていただけに、かなり貴重なのは間違いない。たまにスペックV用のホイールを流用しているGT-Rは見かけるが、オリジナルモデルはほとんどいないだろう。もし見かけたらぜひ拝んでほしい、そんなスペシャルなGT-Rである。