日本人34年ぶりの快挙はどうやって達成された? 勝田貴元が語るWRC初優勝のウラ側 (3/3ページ)

未来の子どもたちの憧れの存在になっていたい

──今年は5月にラリー・ジャパンが開催されますが、この1勝をどのように繋げていきたいですか?

勝田選手:この1勝を最初で最後にはするつもりはもちろんないですし、これからたくさん取るうちの最初の一歩だという風に自分は思っています。その優勝のチャンスを少しでも多く得るために、いい流れを作って5月開催のラリー・ジャパンに挑みたい。2025年は優勝争いをしながら、悔しい思いをしたので、2026年は日本のラリーのファンの皆さんの前で優勝を見せられるようにしたいと思います。

──サファリ・ラリー・ケニアの道中、どのあたりで優勝が掴めるんじゃないかと思いましたか?

勝田選手:土曜日の昼のタイミングでトップに立ったって聞いたときに、行けるんじゃないかと思いました。1分以上の差があったので、自分のペースコントロールさえうまくやれば、勝てると思っていました。

──勝田選手は今シーズン、調子がいいということをおっしゃっていましたが、具体的にどんな部分の調子がいいですか?

勝田選手:クルマも調子がいいですし、昨年から変わったハンコックタイヤに対する理解が深まって、タイヤの使い方が明確になったことも大きいと思います。それによりラリー前のテストでのセットアップが明確になったことで、最初の入りのパフォーマンスにも繋がっていると思います。

──最終SSのパワーステージ直前、コ・ドライバーのアーロンと何を話をしましたか? 42秒ぐらい2番手との差がありましたが、どういう心境でしたか?

勝田選手:アーロンとは勝ち切ろう、という話をしていましたが、最後のパワーステージ前はいままで味わったことのない感覚がありました。タイムを競っているときは攻めていかないと勝負にならないので、そういった意味ではプレッシャーがあって集中できる、いわゆる“ゾーン”みたいな状況に入りやすいんですけど、今回は土が掘れて岩が出てきてしまうような状況だったので、変な岩が出ていなればいいなぁ、と思っていました。

──初優勝した直後だからこそ、すぐに次戦、第4戦のクロアチア・ラリーを迎えたいですか?

勝田選手:ラリーはペースノートの下準備が大変で、すぐにラリーがあるともう時間に追われてストレスフルな感じになってしまうので、どちらかというと時間が空いてくれたほうが楽だなと思っています。もちろん、ラリーという競技を自分の仕事としてやっているので、プロフェッショナルとして集中しながらやっていますが、テストをあわせたら2週間ぐらい家を空けてしまう。家族との時間も大事なので、そういったところのバランスを見ると、やっぱり勝ちましたけど、家族と一瞬だけでもゆっくりする時間が欲しいなっていう感じですかね。これはどのラリーも一緒ですが、1週間が本当に長いし、朝も早くて寝る時間がほとんどないなか、フルシーズンを戦っていると大変なので、少しでもラリーとラリーの間隔があったがほうがいいよねって、ほかのドライバーもみんないっています。

──豊田章男会長から「日本の子どもたちの憧れになってほしい」というようなコメントが出ていましたけど、ラリー終了後に直接、お言葉をいただいたりとか、やりとりとかはあったんでしょうか?

勝田選手:会長とはメッセージでやり取りさせていただいていました。3月の頭に一時帰国した際に、MORIZOさん(豊田会長)とは話をしたんですけど、「2026年は全戦完走を目指して走り切ってほしい。もちろん、優勝だったり、結果も出してほしいという思いもあるけど、世界の道をしっかり走り切ることを考えてほしい」ということをいわれて約束していました。そういったこともあって、今回のサファリ・ラリー・ケニアも走りながらその言葉が頭のなかにも残っていて、リタイヤは絶対にしちゃいけない、とういう部分でその言葉が支えになっていました。そのことをMORIZOさんに伝えたら、すごく喜んでくださっていました。あとは未来の子どもたちへつなげるために……というところなんですけど、僕も世界で活躍したいという思いをもってレーシングカートを始めたり、そこからフォーミュラに上がってラリーに来てという道筋をたどってきたので、憧れられる存在に自分もならなきゃいけない。いま近いところでいうと、チャレンジプログラムの2期生、3期生、4期生、5期生までフィンランドでトレーニングをしていますが、自分が引退するときに後輩たちが挑戦しやすい場を作ってあげられるようにしたい。そのためにも、自分がここで結果を出さずに終わっていたら、先に繋げていけないっていう部分もあるので、まずは結果を出すことを継続して、後輩たちへの支援だったり、未来の子どもたちへ憧れられるような存在になって、10年後にはモータースポーツの文化がガラッと変わっているようなそんな風にできたらなという風に思っています。

──日本のラリー文化やクルマ文化は、どうしたら盛り上がると思いますか?

勝田選手:どんなスポーツでも一緒だと思うんですけど、日本人の選手が活躍することが重要だと思います。それによって、メディアの皆さんにも取り上げていただきやすくなりますし、取り上げていただくことでまったく見たこともなかった人がテレビで見たりとか、ネットニュースで見たりとか、SNSで見たりしてくれると思います。それに露出が増えれば、スポンサーがつきやすい。若い選手たちにスポンサーがつきやすい環境を作っていかないといけないと思います。

──今後の意気込みは?

勝田選手:次戦のクロアチアも自分のベストを尽くして、また優勝を目指して頑張っていきますし、5月末のラリー・ジャパンでは昨年のリベンジも含めてしっかりと日本のファンの皆さんの前でいい結果、いい走りを見せられるように頑張りたいと思います。

 ようやくブレイクスルーを果たした勝田選手の言葉からは、この初優勝の獲得で、またひとつ強くなったことがうかがえただけに、今後も勝田選手の活躍に期待したい。


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廣本 泉 HIROMOTO IZUMI

JMS(日本モータースポーツ記者会)会員

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