この記事をまとめると
■ホンダが予約受注を開始した新型EV「Super-ONE」が「ブルドッグの復活」と話題だ
■「ブルドッグ」とは1983年に登場したシティターボ IIの通称であった
■過激なルックスと性能による独特の魅力がいまも語り継がれる1台であった
ホンダSuper-ONEがオマージュしたのは1980年代のリトルボム
2026年4月、ホンダが話題の「Super-ONE(スーパーワン)」の予約受注を開始した。古くからのホンダファンやクルマ好きの間では、「ついに”ブルドッグ”が帰ってきた!」なんて歓喜の声が上がっているが、そもそも”ブルドッグ”は40年以上も前のクルマだ。令和生まれはもちろんのこと、平成生まれのクルマ好きが現役時代を知るはずもなく、昭和生まれのオジさんがギリギリといったところだろう。
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では、ホンダの最新鋭EVである「Super-ONE」が例えられるブルドッグとは、どんなクルマだったのか、あらためて振り返ってみたい。
ターボブームに現れたホンダ・シティターボ II
1980年代初頭、日本の自動車シーンは空前の「ターボブーム」に沸いていた。排ガス規制の荒波を乗り越え、各社がこぞってパワー競争に明け暮れるなか、ホンダが放った一撃こそが「シティターボ II」、通称「ブルドッグ」だった。
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1982年に登場した「シティターボ」のさらなる高性能版として、1983年11月にデビューした「シティターボ II」の、ひと目見てわかるその最大の特徴は、筋骨隆々感を演出するブリスターフェンダーだ。前後30mmずつ拡大されたトレッドをカバーするために張り出したフェンダーは、都会的なシティのイメージを一変。また、ボンネットには大型のパワーバルジが設けられ、その内側には空冷式インタークーラーが納められるなど、さまざまな走るためのメカニズムがコンパクトなボディに凝縮された。それはまるで闘犬が低く踏ん張っているかのようであり、これこそが「シティターボ II」が「ブルドッグ」と呼ばれる所以である。
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ブルドッグの真髄は、その過激な心臓部にある。搭載された1.2リッター直4SOHCの「ER型」エンジンには、ホンダ独自の電子制御燃料噴射装置「PGM-FI」と、小型・高効率なターボチャージャーが組み合わせられている。その最高出力は110馬力/5500rpm、最大トルクは16.3kgm/3000rpmで、当時のリッターカーでは考えられないほどのハイスペックを実現していた。
そして、このクルマを語るうえで欠かせないのが、電子制御がもたらした「スクランブルブースト」機能である。これは、エンジン回転数が4000rpm以下の低回転域でアクセルを全開にした際、約10秒間にわたって過給圧を通常より約10%上乗せするというものだ。
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現代のスポーツカーに見られる「オーバーブースト」の先駆けともいえるこの機能は、追い越し時などの加速を助ける実用的な側面をもちながらも、ドライバーにとってはまさにドーピング。ここぞというときの秘密兵器のような、そんなワクワク感をもたらしてくれた。
しかし、これほどのパワーを、全高が高くホイールベースの短い、しかも車重わずか735kgという超軽量ボディに詰め込めば、当然ながらその挙動は「穏やか」とは程遠いものになる。アクセルを一気に踏み込めば、トルクステアでステアリングは取られそうになり、フロントタイヤは路面を激しく掻きむしる。
パワーステアリングが一般的ではなかったこの時代、シティターボ IIを腕力とテクニックでねじ伏せて走らせることは、当時のドライバーにとっては最高の腕の見せどころだった。乗り手を選ぶこのじゃじゃ馬感もまた、ブルドッグの熱烈な信者を生む要因となったのは間違いないだろう。
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1986年にシティが2代目へとモデルチェンジし、低いフォルムへと舵を切ったことで、ブルドッグの系統は一度ここで途絶えてしまった。しかし、40年後の2026年、ブリスターフェンダーを備えたトールボーイスタイルが復活する。これを「ブルドッグの再来」といわずしてなんといおうか。1980年代にあった「狂気」を感じさせる「Super-ONE」も、ホンダの歴史に名を刻む、そんな名車になってほしいものだ。