重さを制御するという発想
今回の試乗でもっとも衝撃的だったのが「ポルシェ・アクティブ・ライド」。これは単なるサスペンション制御ではない。シャシーの思想そのものを変える技術だ。加速時にもリヤは沈まず、ブレーキング時のノーズダイブも最小限に抑えられる。コーナリングでは車体は常にフラットを維持し、四輪の接地荷重が緻密に制御される。その結果、2.5トンを超える車重をまったく感じさせない。
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EVの弱点は重量が重いこと。そこでポルシェは単に「軽量化」という従来の手法だけではなく、むしろ重量を前提とし、それを積極的に制御対象として取り込んでいる点は見逃せない。この発想の転換こそが、カイエンElectricの核心である。高い車重は慣性エネルギーの増大を意味するが、それを精密に制御できれば、安定性とグリップ性能の向上に寄与する。ここにポルシェが長年追求してきたダイナミック・セーフティの進化形がある。もはやポルシェは911からカイエン、パナメーラという高級車の領域にも、ポルシェ独自の走りを可能としている。ポルシェのプレミアムとは性能が高級なのである。
結論:王者は進化を止めない
電動化の波は、すべての自動車メーカーにとって避けられない現実である。しかし、その波にどう向き合うかで、ブランドの真価が問われる。ポルシェは守りに入らなかった。むしろ電動化を契機に、自らの強みである運動性能を再定義してきたのである。もちろん、911に代表される内燃機関の魅力は揺るがない。それでも、このカイエンElectricを体験すると、「EVだからポルシェではない」という議論は完全に過去のものとなる。カイエンElectricはSUVでもなければ、単なる高性能EVでもない。それは、新時代におけるポルシェの姿そのものである。
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新しい走りとは何か? その問いに対して、ポルシェはまた一歩先に進んだと思った。
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