現在の中古価値は数百万円! SUBARUの前身「富士重工」が作ったスクーター「フジ・ゴーデビル」はなんでそんなに価値がある?

この記事をまとめると

■スバルの前身である富士重工は1960年代に折りたたみスクーターを発売した

■フジ・ゴーデビルは53ccの2ストロークエンジンで2.3馬力

■アメリカでの人気が高くデッドストックなら400万円以上の値がつくこともある

富士重工の折りたためる原チャリがスゴかった

「折りたためるバイク」と聞いて、多くのクルマ好きが真っ先に思い浮かべるのは、1981年にホンダ シティのトランクに収まるサイズで登場した「モトコンポ」だろう。あるいは、最近ホンダが海外で発売した電動スクーター「モトコンパクト」に胸を躍らせているファンも多いかもしれない。

 だが、歴史をさらに遡ること約20年。1960年代の日本メーカーは、すでにモトコンポのコンセプトを完璧な形で具現化した原チャリを製造していた。その名は「フジ・ゴーデビル(Fuji Go-Devil)」である。

 フジ・ゴーデビルを製造したのは、スバルの前身である富士重工業。重度のスバルファンですら実車を見たことがある人はほとんどいないだろう伝説のマイクロスクーターとは、果たしてどんなモノだったのか?

 日本が東京オリンピックに沸き、富士重工が名車「スバル360」で日本のモータリゼーションを牽引していた1964年、フジ・ゴーデビルは誕生した。

 当時の富士重工といえば、日本を代表するスクーターブランド「ラビット」を擁する二輪メーカーとしての顔ももっていた。フジ・ゴーデビルは、ラビットで培った小型エンジン技術を「究極のポータブル」へと全振りしたモデルだった。

 最大の特徴は、Go-Devil(荒っぽい作業を行うタフな道具という意味の米国方言)という車名どおりの機動力。シンプルなチューブフレームに53ccの2ストローク単気筒エンジンを搭載し(最高出力2.3馬力、最高速度35km/hであったらしい)、タイヤは初期のホンダ・モンキーと同じ幅4インチ(約10cm)、ホイール径わずか5インチ(約12.7cm)の小径タイプ。

 そして驚くべきは、ハンドルだけでなくシートやフレームまでを巧みに折りたたむことができ、専用のスタイリッシュなトラベルバッグにすっぽり収まってしまうという設計だった。

 そのメカニズムは、現代の基準で見れば潔いほどにシンプルで、徹底的に割り切ったものだった。フロントはリジットフォーク(サスペンションのない固定式フロントフォーク)であり、エンジン始動は草刈機のようなプルスターター方式を採用。70ポンド(約33kg)という車体重量は、最新の電動スクーター「モトコンパクト」が約19kgであることを考えれば重く感じるが、当時としては驚異的な軽さだった。

 このゴーデビル、じつは日本国内ではなくアメリカのコレクターの間でカルト的な人気を博している。最近、オハイオ州コロンバスのマーケットプレイスに出品された個体には、なんと1万2000ドル(直近のレートで約190万円)というプライスタグが掲げられた。

「古い原チャリが200万円近くとは……」と絶句するかもしれないが、オークションサイト『BRING A TRAILER』などの取引実績を見れば、その過熱ぶりはよくわかる。過去に出品された13台のうち3台が1万ドル以上で落札されており、2022年2月には、オリジナルの箱に入ったままの1968年モデルが3万5000ドル(当時のレートで約470万円!)にて落札されるという、ヴィンテージスバル顔負けの記録も打ち立てている。

「フジ・ゴーデビル」は、単なる古い折りたたみバイクではない。それは、現在ではSUBARUと名乗っている富士重工が、当時から「移動の自由」をどこまでも追求しようとしていた証であり、現在のスバルに通じる「独創性」の原点でもある。

 もしあなたに在米の親戚や友人・知人がいるとしたら、ぜひともその家のガレージ奥深くなどを確認してもらうといいだろう。もしも小さな見慣れぬトラベルバッグが眠っていたら……そのなかには、数千ドルから数万ドルの価値を秘めた「スバルの魂」が折りたたまれている可能性も、決してゼロではないはずだ。


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伊達軍曹 DATE GUNSO

自動車ライター

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