ブレーキローターとパッドを強化すると効果バツグン
大径ローター/広面積パッド、高摩擦係数のパッドについては理解してもらえると思うので、ここでは構造的な問題となるピストン(キャリパー)について考えてみたい。
ブレーキパッドは、回転するディスクローターをはさむ形で2個が1組となりブレーキキャリパーに取り付けられている。そして、このキャリパー内には、油圧によってパッドを押し出しブレーキディスクに圧着させるためのピストン機構が設けられている。
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1組のブレーキパッドに対し、ピストンが1個の方式をシングルピストン、表裏それぞれのパッドに専用のピストンをもつ方式がオポジット型(対向ピストン型)となり、構造は複雑になるがそれぞれパッドに対して専用のピストンをもつオポジット型のほうが能力的に優れることになる。
オポジット型ブレーキは、スポーツタイプの高性能車に採用される例が多く、左右1組のパッドに対して1組(2個)のピストンをもつ方式を2ポット型、4個のピストンをもつ方式を4ポット型、6個のピストンをもつ方式を6ポット型と呼び、ブレーキメーカーレベルでは10ポット型まで考えられている。
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ポット数が増えるのは、制動力を上げるためディスクの円周方向に対してブレーキパッド長が長くなり、パッドの圧着力を安定させるためピストン数を増やすためだ。ちなみにF1用は6ポットが主流。かつてはホイール径が13インチと小径だったこともあり、大きなローター/パッドが使えず6ポットが使用上限となっていた。
さて、量産車ではひとつのキャリパーに対して6ポットあたりが上限となっているが、ポット数ではなくキャリパー数を増やした方式もある。レーシングカーも含め、高制動力が要求される車両のブレーキは、シングルキャリパー方式にマルチポット数で対応しているが、現代の高性能ブレーキを考えれば(F1用はカーボン製ディスクで冷却ホール数1000〜1100個)十分満足できる性能が得られているようだ。
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ところが、市販車でキャリパーを2個、ツインキャリパーを装備した車両があった。たとえばマイバッハ57S。これは3トン近い大型超重量級の車体で安定した制動力を確保するためのもので、ブレーキパッドの摩耗まで考慮してキャリパー数をふたつにしたもので、単純に考えてもキャリパー1個あたりの(ブレーキパッド)負担は半減することになる。
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ツインキャリパー方式は、安定した制動性能(制動力、パッドの耐摩耗性)を得るために実用化されたものと考えてよく、競技用車両や高性能スポーツカー(極論すればハイパーカー)であれば、キャリパーの数よりローター材質やポット数、ブレーキ冷却システムによる対応のほうが、より効果的と考えられているのが現状だ。ただし、ドリフト競技においてリヤタイヤをロックする目的で、リヤのキャリパーを増設するケースも存在する。
ガソリン自動車が考案されてから約150年。メカニズムとしては比較的シンプルだが、それたけにキメ細かな改善、改良の積み上げによって進化してきた装置がブレーキシステムといえるだろう。競技用のカーボンディスクローター、マルチポット方式が存在する一方で、HV、EVの登場により機械式ブレーキの使い方、考え方そのものが変わってきている。ただ、動く物体を止める装置としてのブレーキの役割は、走行速度の高速化に伴いより重みを増していることも事実である。