もっと燃費がよくなりそうなのにナゼない? ディーゼル車にCVTを採用しないワケ

この記事をまとめると

■CVTは燃費性能に優れる一方で大トルクへの耐久性に限界がある

■ディーゼルエンジンは低速トルクと振動が大きくCVTに不利となる

■高出力車ではATやDCTが主流となりCVTは広がらなかった

大トルクへの耐久性で不利なCVTの限界

 CVT(無段変速機)は、トルクや出力の特性が回転数に対して山なりに上下するガソリンエンジンを効率よく(すなわち燃費よく)、かつ加速もよく働かせるのに好都合だと評価されており、軽自動車や小型車を中心に普及している。一方で大柄な車種では採用例が少ない。

 ベルト式CVTは、回転半径を調節できる円錐形をしたプーリー2個と、その2個のプーリーに渡した金属製のベルトによって変速する。歯車を使う変速機に比べ、段差のない無段階の変速ができるため、エンジンの運転状況に応じて細かく対処でき、燃費も加速も同時に改善できる利点がある。

 その一方で、金属を使うといってもベルトにして使うので、対処できる力(トルク:回転力)に限度がある。歯車に比べ強度が劣るのだ。したがってCVTを採用するのは小さなクルマが多い。そうしたなか日産自動車は、V型6気筒エンジンを搭載するティアナなどに大トルクに耐えるベルト式CVT(日産はエクストロニックCVTと命名)を採用した。

 また、ディーゼルエンジン車ではCVTを採用する車種が見当たらない。ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンに比べ低速トルクが大きい。欧州では小型車にディーゼルエンジンが多いが、多くが手動式(マニュアル)変速機との組み合わせだ。ディーゼルエンジン車の自動変速機(オートマチック)は、遊星歯車を使うトルクコンバーター式かDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)との組み合わせとなる。ベルトより歯車のほうが大トルクに対し耐久性が高いからである。

 ディーゼルエンジンは圧縮比が高いため、振動が大きくなる。その振動の大きさも金属ベルトの耐久性に影響を与えるようだ。

 日産はCVTの拡大採用をめざし、トロイダル式(日産はエクストロイドCVTと命名)という金属ベルトを使わない無段変速機を開発し、セドリックやスカイラインに採用した。トロイダル式は金属のプーリーと金属で円盤状のローラーを組み合わせることで高出力のガソリンエンジンにも耐え、なおかつFRレイアウトの後輪駆動にも対処した。しかし、高出力に耐えうる金属のプーリーとローターを用いるため変速機自体の重さが増すうえ、金属の部品同士を滑りなく駆動するため高圧の油圧制御も不可欠で、採用は広がらなかった。

 同じように、低速トルクの大きなディーゼルエンジンでも、CVTの対応はトロイダル式であっても難しさが増すことになるだろう。時間の経過とともに、トルクコンバーター式の自動変速機がロックアップ機能を緻密に制御するなどにより効率を高め、高性能エンジン車で使われるようになり、そもそも小型車を中心としてきたCVTを大柄で高出力なエンジンを搭載する車種へ広めることは起こらなかった。当然そのことは、ディーゼルエンジン車に対しても同様の判断になるだろう。


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御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター

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