速さだけではなく安心感もバツグン
実際、スバルはこのクルマでAWD制御も大きく進化させている。従来型ソルテラでは車体情報主体だった制御を、トレイルシーカーではアクセル操作、ステアリング操作、タイヤ荷重、横G推定まで含めた制御へ進化させた。さらに、回生領域まで制御範囲を広げ、前後輪の荷重変化に応じて駆動・回生配分を可変制御している。その効果はワインディングで非常によくわかる。
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タイトコーナーでアクセルを踏み増した瞬間、車体が自然に旋回方向へ向きを変えていく。しかも不自然な電子制御感が薄い。ドライバーが修正舵を入れる前に、クルマ側が先まわりして姿勢を整えていくのである。雪道での予見性向上を重視したという説明にも納得できる。実際、こうした制御は滑りやすい路面ほど効いてくるだろう。
乗り味もかなり洗練されている。BEVは床下に大容量バッテリーを搭載するため、どうしても重量級になる。トレイルシーカーもAWD仕様では車両重量2000kg超となる。しかし、このクルマは大トルクによる軽快なアジリティで重さを感じさせにくい。スバルはサスペンション側で、動き出しから減衰を利かせる方向へチューニングしている。これによってBEV特有の上下動を抑え、フラット感を重視しているのである。
また、試乗車は18インチ仕様で、サスペンション入力の角をうまく丸め、路面の荒れをしなやかに吸収する。静粛性も非常に高い。BEV特有の無音空間によって、会話のしやすさまで変わってくる。
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BEVで重要な航続距離も十分実用域へ達した。FWD仕様は734km、AWDは690km確保する。しかもバッテリープレコンディショニング機能を搭載。急速充電スポットをナビ設定すると、その到着前からバッテリー温度を最適化する。これによって急速充電性能を安定させ、約28分で80%充電を可能にしている。
従来BEV最大の問題は、カタログ航続距離より実際の充電ストレスだった。高速道路を長距離移動し、ようやく急速充電器へ到着したのに、バッテリー温度上昇によって充電能力が発揮できない。そのストレスがBEVへの不信感を生んでいた。しかし、トレイルシーカーは、その現実的問題へかなり本気で向き合っている。
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さらに興味深いのは、このクルマが単なる移動手段ではなく、生活インフラとしての価値まで視野へ入れている点だ。アウトドアでコーヒーを淹れる。調理器を使う。あるいは災害時に予備電源として使う。BEVは単なる走る道具から、大容量蓄電池としての役割も進化し始めているのである。トレイルシーカーは、その新しい価値をスバルらしくまとめ上げたBEVなのだ。
速さだけではない。安心感、扱いやすさ、悪路での信頼性、長距離移動の快適性。その総合力で勝負している。BEVという新しい乗りものが、ようやくユーザー中心のクルマ作りへステップを深めてきた。そのことを強く感じさせてくれるのだった。
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