この記事をまとめると
■ケータハム・エアロセブンはF1技術とセブン哲学を融合したコンセプトカーだ
■公道とレースの価値観を逆転する思想で設計された
■資金難で市販化されることはなく幻の1台となった
セブンのDNA×F1の技術思想
2013年9月20日、シンガポールF1グランプリの開幕に合わせるように、ケータハムカーズは「エアロセブン・コンセプト」を世界初公開した。エアロセブンは、ケータハムのスポーツカーラインアップ拡大計画の第1弾と位置づけられており、2014年秋に発売を予定していた新型スポーツカーの方向性を示すモデルとして発表された。
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コーリン・チャップマンが唱えた「simplify, then add lightness」。つまり、単純にして軽くせよ、という哲学を体現した初代ロータス・セブンのコンセプトを、現代のF1技術で再解釈したのがエアロセブンだ。
ベースはケータハム・セブンCSRのプラットフォーム。ウインドスクリーンのない2シーターのスピードスターボディをカーボンファイバーで包み、F1マシンと同じプッシュロッド式フロントサスペンションを採用。新設計のダンパーやスプリング、スタビライザーとの組み合わせにより、剛性の高いシャシーから最大限のポテンシャルを引き出す設計だ。
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搭載するエンジンはセブン485譲りのフォード製2リッター直列4気筒自然吸気で、最大出力240馬力を発生し、0-100km/h加速は4秒以下というパフォーマンスを実現した。トランスミッションは6速MTだ。
エアロセブンの興味深い点のひとつとして、ステアリングにパッシングやピットレーン・スピードリミッターといった機能が用意され、ドライビングにかかわるほぼすべての機能がそこに集約されている点がある。そして特筆すべきは、デフォルトの走行モードが「レース」であり、「ロード」モードに切り替えるにはボタン操作が必要という設計だ。「日常がレース、特別な日が公道走行」という価値観の逆転が表れている。
そして、ケータハムのロードカーとして初めて、フル可変式トラクションコントロールとローンチコントロールが装備された。またボッシュのレース由来のABSシステムも採用されている。センターコンソールに鎮座するディスプレイユニットには、エンジン回転数やオイルレベル、トラクションコントロールやブレーキ設定まで、多岐にわたるパラメーターをリアルタイムの3Dレンダリングで表示する。これはケータハムが描く次世代デザインの姿であり、将来のモデルへの思想的な橋渡しでもあった。
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製造はケータハム・テクノロジー&イノベーションとケータハムF1チームの施設で分担し、最終組み立てを英国にあるケータハム・カーズの工場で行う計画だった。まさにF1の技術が市販車に直接流れ込む体制であり、ケータハムがこのモデルにいかに本気だったかが伝わる。
しかし、現実は厳しかった。2014年初頭、ケータハムは資金難に陥り、関連するすべてのコラボレーションとコンセプト開発計画は中止に追い込まれた。2014年8月を予定していた生産・納車開始は実現せず、エアロセブンはそのまま幻のモデルとなった。セブン以外のモデルを世に出そうという挑戦は、かつての「21」に続いて2度目の挫折を経験したわけだ。
それでもエアロセブンが提示した「F1の思想を纏って公道を走るケータハム」というビジョンは、今なお色あせずにクルマ好きの記憶に残り続けている。