ドイツ系高級車とはそもそもの世界観の在り方が異なるDS
思わず口もとが緩むような素晴らしく座り心地のいいシートに腰掛け、最初はギョッとしたけど実際には抜群に握りやすく操作しやすかったX型のステアリングをに腕を伸ばし、走り出してみる。N°8の基本骨格は、ステランティスグループが電動化戦略に向けて開発した最新型プラットフォーム、ステラ・ミディアム。そしてパワートレインは、現時点ではバッテリーEVのみ。床下に97.2kWhのリチウムイオンバッテリーを敷き詰め、フロントに281馬力と343Nmのモーターを、リヤに113馬力と166Nmのモーターを配して、4輪で駆動をかける。
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システム最高出力は350馬力で、0-100km/h加速は5.4秒。車重は2.3トン近くあるけれど、その加速は十分に力強く、不満はまったく感じられない。というか、そもそもがそういうことを取り沙汰するようなクルマじゃないし、そういう走り方をしたいという欲求を抱かせないクルマだ。周囲にエレガンスを感じさせるよな走り方をしたくなるのだ。
その理由は明白。エクステリアやインテリアから来る印象もそうなのだけど、何より室内が静寂といっていいくらいに静かなこと。独自の3層のシーリング構造やラミネーテッド・ガラスが車体の生む音やロードノイズ、外界の喧噪などを大幅に遮断してくれるから、大袈裟にいうなら別世界にいるような心地にさせてくれるのだ。試しに窓を開けてみると一気に現実に引き戻されるから、これは誰もが一発でわかることだろう。
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そして、乗り心地のよさだ。ブランドの精神的な支柱となってるシトロエンDSのようなふんわりフカフカというフィールとは異なって、それなりに締まってはいるのだが、サスペンションが路面の凹凸を綺麗に丸め込むようにしっかり作動し、路面をていねいに撫でていくようなヒタヒタとした感触を与えてくれるし、シートの出来が素晴らしいこともあって、とても快適。ちょっとした“新世代の夢見心地”といったら変だろうか?
それには骨格が強固なことに加え、DSアクティブスキャンサスペンションの存在も大きいと思う。前方の路面状況をカメラで読み取って、減衰力をアクティブ制御する仕組みなのだが、そこがさらに進化して、これまで以上に素早く、あるいは緩やかに、必要に応じて収束させていく感覚がある。
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加えていうなら、この車体にしてこの重量のクルマでありながら、あらゆるコーナーで素直にしなやかに曲がってくれる、ニュートラル感の強いハンドリングも美点のひとつだろう。ここの味つけに失敗するとせっかくの穏やかで優雅な気分がだいなしになるところだけど、このクルマにはまったくそういうところがないのだ。
価格が1000万円を超えてこの車格ということは、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディといったドイツ3強がハッキリとライバルになるわけだけど、DS N°8はまったく世界観の異なる独自性で勝負できるだけのものを持ってると思う。たとえていうなら、不思議な陶酔感、だろうか。走らせていて、車室内にいて、これだけ優雅で官能的な気もちでいられるクルマは、そうそうあるもんじゃない。
僕はこのDS N°8、とても好きだ。
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