この記事をまとめると
■港湾エリアは巨大なコンテナとクレーンと物流システムによって支えられている
■コンテナの配置や荷繰りやガントリークレーンの操作にはノウハウと職人技が必要だ
■船の渋滞や海コン輸送など一般には知られていない港ならではの世界が広がる
港湾関係者しか知らない港ならではの世界がある
港湾エリアは、外から見ると巨大なクレーンとコンテナが並ぶだけの無機質な場所に見える。ところが、その中身を少しのぞくと、かなりマニアックで奥深い世界が広がっていることがわかる特別な場所だ。まず基本になる、コンテナについて話していこう。
いま世界中を流通している海上コンテナは、20フィートや40フィートといった国際規格を前提に作られている。だから、船も港のクレーンもヤード内の荷役機械もトレーラーも、この寸法を基準に設計されているのだ。つまりコンテナは、ただの鉄の箱ではなく、世界の物流を同じ物差しで動かすための共通言語なのである。
ガントリークレーンで吊るされたコンテナ画像はこちら
また、コンテナにはサイズだけでなく、積み方にも独特のルールがある。船に積む場合、重いコンテナを上に置くわけにはいかないし、危険物や冷凍コンテナは置き場所が限られる。冷凍コンテナ(リーファーコンテナ)は電源につなぐ必要があるため、船内でもヤードでもコンセントのある場所に配置される。見た目は同じ箱でも、中身や重量によって扱いはまったく違うというのも関係者以外は知ることができない事実といえるだろう。港では、単に早く積めばいいのではなく、どこに何を置くかという段取りが重要になるのだ。
港でしか見られないガントリークレーンは港湾の主役ともいえる。ガントリークレーンは岸壁にそびえる巨大なクレーンのことで、コンテナ船からコンテナを降ろしたり、逆に積み込んだりする。その巨大な姿も圧巻だが、操縦にもかなりの専門技術が必要となる。たとえばコンテナを吊り上げるスプレッダーという装置を、コンテナの四隅にある金具へ正確に合わせるのはまさに職人技の最たるものだ。しかも相手は海に浮かぶ船なので、わずかに揺れる。風もある。吊ったコンテナも振れる。そこでガントリークレーンオペレーターは、揺れを読んで、止めるのではなく収めるように動かす。
港にあるガントリークレーン画像はこちら
さらに港湾エリアには、船にも渋滞があることを知っているだろうか。トラックがバースに入る順番を待つように、船も岸壁が空くのを沖合で待つことがある。これをバース待ちという。コンテナ船は予定通りに来るとは限らない。天候、潮、前の港での遅れ、荷役作業の混み具合などで到着時間はずれるからだ。その結果、港の前に船が並び、空き待ちになる。大型船は一度に大量のコンテナを運ぶため、遅れが出ると後工程への影響も大きい。港湾物流は、海の上からすでに時間との戦いが始まっている。
コンテナヤードのなかも独自の世界といえる。コンテナは広大な敷地に積み上げられているが、適当に置いているわけではない。輸入、輸出、空コンテナ、実入りコンテナ、搬出予定の早いもの、船に積む順番などで分けられている。
積み上げられたコンテナ画像はこちら
ただし、トラックが来ない、通関が遅れる、船のスケジュールが変わるなど予定は常に変わる。こうなると、奥にあるコンテナを出すために、手前のコンテナをいったん別の場所へ移す必要があるのだが、この作業の呼び名は「荷繰り(にぐり)」という。港では、コンテナを動かす回数をいかに減らすかが、効率を左右する。
また、港湾エリアではトラックの動きもかなり特殊だ。海上コンテナを運ぶトレーラーは、コンテナそのものを荷台に載せるというより、シャシーと呼ばれる骨組みの台車に固定して運ぶ。20フィートと40フィートでは車両の扱いも変わり、重いコンテナでは重量配分にも気を使う。コンテナの中身はわかってもなかの様子は外から見えないため、重量が片寄っていると走行時の安定性にも影響する。このため、港を出たあとの一般道でも、海コン輸送には独特の緊張感があるのだ。
コンテナを積むためのトラック画像はこちら
港湾エリアのおもしろさは、スケールの大きさと細かさが同時に存在しているところにあるといえる。関係者ではない限り、その細かさや独自の技を知る機会は少ないが、じつはさまざまなシステムや技術、職人の技が合体した、巨大な現場なのである。