ビルの爆破なんて無粋なマネはしない! 日本の「静かな解体」はハイテク建機と熟練オペレーターが生み出す芸術!!

この記事をまとめると

■大割圧砕機は鉄筋コンクリートを強力に破砕

■爆破解体より安全かつ精密な作業が可能となっている

■資源分別と低騒音で都市解体に適している

精密さと環境性能を両立

 海外の映画やニュースで、巨大なビルが一瞬にして崩落する「爆破解体」の映像を見たことがあるだろうか。ダイナミックで爽快感すら覚える光景だが、じつは現在の日本では爆破解体を行う必要性がほとんどない。なぜなら、日本の油圧アタッチメント(重機の先端工具)が、爆破解体に匹敵する圧倒的な破壊力と緻密さを両立させているからだ。

 その主役となる高性能アタッチメントが、国産メーカー各社がしのぎを削る「大割圧砕機(おおわりあっさいき)」である。これは、油圧ショベルの腕の先に取り付けられる、クワガタのハサミのような形状をした強力なアタッチメントのことだ。高圧油圧シリンダーを搭載しており、その先端にかかる圧力は数百トンに達する。ビルの強固な鉄筋コンクリートの柱や梁を、いとも簡単に噛み砕いてしまうのだ。

 その威力は、油圧の大きさだけに依存しているのではない。刃の奥には特殊鋼のブレード(カッター)が装備されており、コンクリートを破壊しながら、なかに埋め込まれた太い鉄筋まで切断している。この「破砕」と「切断」を同時に、かつハイスピードで行うメカニズムこそが、日本の建機技術の真骨頂といえるのだ。

 海外で主流の爆破解体に対し、この高性能アタッチメントを使用するメリットは、日本の狭い都市環境に最適化されている点にあるといってよい。爆破解体は一歩間違えれば周囲のビルを巻き込むリスクがあるが、圧砕機による解体は「上階から順番に、狙った場所だけをピンポイントで」切り崩していくといった、10cm単位の緻密なコントロールが可能なのだ。

 かつて主流だったコンクリートを「叩き割る」ブレーカ(ノミのような工具)や爆破に比べて、圧砕機は「掴んで潰す」ために振動や騒音が非常に少ない。また、爆破のように街を一瞬で灰色の煙に包むような大量の粉塵も発生せず、散水しながら静かに作業を進めることができるのだ。

 さらに、爆破の場合はコンクリートと鉄筋が複雑に絡み合った巨大な瓦礫の山ができ、後処理に膨大な時間がかかる。しかし、大割圧砕機を使えば、解体したその場で「コンクリート塊」と「鉄筋(金属資源)」を、綺麗に分別しながら作業を進めることができるのだ。これはリサイクル大国である日本ならではの強みといえよう。

 一方で、デメリットもがないわけではない。一瞬で建物を消し去る爆破解体に比べると、重機で少しずつ噛み砕いていくため、「解体完了までに相応の日数(時間)がかかる」という点だ。また、超高層ビルの場合、重機をビルの屋上までクレーンで吊り上げ、自らが乗っている床を壊しながら下層へ降りていくという、オペレーターの熟練度を要するスリリングな工法をとる必要があり、工期全体のマネジメントが重要になる。

 爆破解体が「動」の破壊なら、国産の高性能アタッチメントによる解体は「静」のインテリジェンスな破壊といえる。周囲への迷惑を最小限に抑えて資源を分別しながら、まるで外科手術のように美しくビルを解体していく。普段何気なく見かけている重機の先端には、世界に誇る日本のハイテクと圧倒的なパワーが使われているのである。


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