「フィギュアスケートかよ……」 有資格者が絶望するほどの「フォークリフトの達人」が繰り出す神業 (2/2ページ)

ただ荷物を運んでるだけではない

⚫︎熟練者はバック走行がうまい

 大きな荷物を運ぶと、前が見えないことがある。そのときはバック走行になるが、ここで腕の差が出る。ベテランは後方確認をしながら、周囲の人の動きや通路の幅まで把握している。しかも、ただ後ろ向きに走るのではなく、どこで曲がり始めれば荷物が壁や柱に当たらないかを計算している。ハンドル操作も慣れたもので、狭い倉庫をバックでスイスイ走り抜ける光景は、フィギュアスケートを見ているようなのだ。

⚫︎パレットのクセを読むことができる

 形は似ているが、じつはパレットにもクセがある。木製パレットなら割れや反り、樹脂パレットなら滑りやすさ、古いパレットなら強度不足。見た目は同じでも、爪を入れたときの感触やもち上げた瞬間のたわみで危険を察知することがあるという。初心者にはただの台に見えても、ベテランには状態の違いが見えている。だから無理にもち上げず、角度を変えたり、別のパレットに差し替えたりする判断ができるのだ。

⚫︎止まる技術がプロ

 フォークリフトは走らせるより、止め方に差が出るマテハン(マテリアルハンドリング:物流や製造現場における移動や保管をする機器の総称)なのだ。急に止まれば荷物が前に揺れるし、少しのショックで積み荷がズレることもある。ベテランは止まる直前に速度を抜き、荷物に余計な力をかけない。ブレーキをかけるというより、いつの間にか止まっている感じに近い。

⚫︎爪の感覚がわかる

 フォークリフトの爪はレバーで操作するのだが、1トンクラスのフォークリフトであってもその爪の大きさはかなり大きいものとなる。慣れるまではレバーと爪の動きがリンクしないため苦労するのだが、熟練のフォークリフトオペレーターになると、爪に載せた荷物の重心や重さ、安定感などが運転しながらも体に伝わってくるという。

 実際に爪にかかる荷重や荷物の重心など、オペレーターへと伝達される情報は非常に少ないのだが、わずか数センチだけパレットを持ち上げた瞬間に違和感や不安定さが手に取るようにわかるのだという。これはもう職人芸といっても過言ではない。

 フォークリフトは、速く動かせる人がうまいのではない。荷物を壊さず、人を危険にさらさず、無駄なく、静かに、確実に動かせる人がうまい。ベテランフォークマンの仕事を見ていると、派手な動きは少ない。けれども爪の角度、止まり方、荷物を見る目、切り返しの少なさ、そのすべてに理由がある。初心者の筆者にとって、フォークリフトは単なる作業車ではなく、物流現場の職人技が詰まった道具だった。


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