ひとりのR32GT-RオーナーのSOSがメーカーを動かした! 「NISMOヘリテージ」プロジェクトの舞台裏 (2/2ページ)

スタートから10年が経ち2026年は原点に立ち返る

 さらに、NISMOと日産のアフターセールス部門にとどまらず、購買部門などさまざまな部署と連携を図りながら、まずはR32の部品供給状況の徹底的な洗い出し作業からスタートした。

「その作業で見えてきたのは、意外な結果でした。R32型GT-Rを構成する部品のうち、2016年時点で約7割がまだ供給継続されていたのです。いまある部品の継続生産をお取引先さま(サプライヤー)にお願いしつつ、製造廃止となっている残り3割とどう向き合うか、そこから検討を始めました」と日産グローバルアフターセールス部門の小倉康弘氏。

 ただ、すべての部品を復刻するのは現実的ではない。まずは車両の維持に不可欠な部品から優先順位を付け、サプライヤーに再生産の可否を打診。そして再生産可能な部品をまとめて公表したのが、2017年のNISMOフェスティバルだった。

 部品供給の方法は、純正部品の復刻だけでなくリプレイスパーツも用意される。これは「製造廃止になった純正部品を限りなく純正に近い状態でニスモが新規に製造するパーツ」のことだ。純正部品のような大規模生産ではなく、少量生産でもコストを抑えられるアフターパーツに近い製造方法としている。

「とはいえ、単に復刻するだけでなく、自動車メーカーとしてのクオリティを担保するために、日産/NISMO、お取引先さまによるフィッティング確認作業は徹底しています。なかには1週間1個しかできない部品もあります」とNISMOの高山陽三氏。

 現在、ヘリテージ部品のラインアップは300アイテム以上にまで増えている。スタート当初は74アイテムだったことを考えれば、その数は大きく増えた。

 プロジェクト開始から、まもなく10年。当初は”10年分の部品を作れれば十分ではないか”と考えていたそうだが、その10年が経ったいまでも需要は衰えていない。むしろ中古車市場でGT-Rの価値が高まるにつれ、長く乗り続けたいと考えるオーナーは確実に増えている。

「”GT-Rを末永く乗り続けたいオーナーを支えること”。そして、”そのために必要な部品を絶やさず供給すること”がNISMOヘリテージのミッションです。10年目を迎える今年は、その原点に立ち戻って事業を進めていこうと考えています」と日産グローバルアフターセールスの橋本翔太氏。

 そして忘れてはならないのが多くのサプライヤーの存在だ。彼らの協力なくして、このプロジェクトは成立しない。

 R32型GT-Rが誕生してから、まもなく40年。ヘリテージ事業を取り巻く環境は厳しさを増しつつあるが、GT-Rというクルマ、そしてブランドを未来へ残すための静かで長い挑戦は、これからも続いていく。

 日産/NISMOブランドの元気復活は、ヘリテージから始まるかもしれない。

NISMOヘリテージパーツ

  

 日産自動車とNISIMO、そしてサプライヤーの3者が連携し、製造廃止となった純正補修部品を復刻・再供給する取り組み「NISMOヘリテージパーツ」だ。2017年11月に活動を発表し、同年12月より部品の供給をスタートした。国産メーカーによるヘリテージ活動の先駆け的存在だ。

※本記事は雑誌CARトップの記事を再構成して掲載しております


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