極端な報道と政府の対応のズレがナフサ不足を招いた
ガソリンなどの燃料は、個人レベルで保管するにも限度がある。ユーザーレベルでは愛車を満タンにするくらいしか手はないし、事業者レベルでもタンクの容量は消防法によってせいぜい1000L(軽油)と制限されている。そもそもガソリンなどの燃料は生モノであり、安定供給を矜持とするプロフェッショナルが扱っている。だからこそナフサ不足と言われたなかで、燃料の供給には問題は起きなかったのだ。
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一方、ナフサ由来の製品になると保管が容易になる。ラップやゴミ袋を、いつもの1.5倍多めに買ったくらいであれば、パントリーや食品庫に収まるだろう。自動車マニアのガレージに、いつもより多めに潤滑剤やオイル類を保管するのも難しくない。
こうした、個人レベルで安心を得るためのマイルドな買い占めをしたことが、ナフサ不足という報道に端を発した石油化学製品の目詰まりにつながった面は否めない。
その原因としては、極端な報道の影響力と、それを否定する政府の対応のズレにあったと思う。前述したように、「ガソリンが不足していないのだから、原油は足りている。つまりナフサも不足しようがない」というロジックで説明すれば、ここまで話はこじれなかったはずだ。
カーボンニュートラルで起こる本格的な供給減
しかしながら、将来的には”本物のナフサ不足”に対応する必要があるのは事実だ。ナフサは原油の精製で生まれると書いたが、日本政府は2050年のカーボンニュートラルを目標としている。
カーボンニュートラルの実現というのは、いまのようにプラスチック製品が供給されないことを意味している。今回のナフサ不足報道による供給不足といえる状況は、消費者の心配という感情によって引き起こされたと言えるが、2050年には本当に供給量が減ることになるはずだ。
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これを機にプラスチックだけでなく、原油に由来する製品の代替品について検討を始めるべきだろう。
たとえば、エンジンオイルについて。今回の騒動では、保管が利くという理由で、実需ではない部分でエンジンオイルが不足した印象もあるが、原油の輸入が減れば、エンジンオイルの製造が難しくなることは自明だ。
eフューエルなどの人工ガソリンさえあればエンジン車とカーボンニュートラルは両立すると考えがちだが、エンジンをまわすためにはエンジンオイルが欠かせない。この領域でもカーボンニュートラルが実現できなければエンジンは生き残れない。同時に、そのほかの油脂類やタイヤについても原油に頼らない製造の研究を進めるべきだろう。
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今回の騒動を教訓にして新たな代替手段を考えたい
数年前、小泉進次郎・環境大臣(当時)がレジ袋の有料化を実行した際は、非難轟々だった。しかし、今回のナフサ騒動においてレジ袋が不足しているという指摘は少なかった。それは、エコバッグという代替手段が広まっていたからという面もあるだろう。
平時から石油関連製品の代替手段を考えておくことの重要さこそ、ナフサ不足騒動の教訓となりそうだ。
今回の騒動はカーボンニュートラルに向けた課題の抽出や、ユーザー心理における予行演習になったと言える。これを機に、政府・企業・個人の各レベルにおいてナフサだけでなく、石油化学製品の代替品の開発が加速するきっかけになることを期待したい。そうなれば、雨降って地固まる、となるはずだ。
※本記事は雑誌「CARトップ2026年8月号」の記事を再構成して掲載しています