贅肉が削ぎ落とされたボディとハイチューンエンジン
また、標準状態ではエアコンはもちろん、オーディオやナビゲーション、遮音材すらすべて省かれました(無償オプションであと付けはできましたが、これを選ぶのはCSLへの冒涜とすらいわれたものです)。おまけにリヤウインドウは薄肉ガラスになり、ラゲッジルームのフロアマットまでダンボールのような軽量素材に替えられ、日常の使い勝手などは一切シカト。それほどCSLにはこだわりがあったということでしょう。
このストイックな軽量ボディに組み合わされたのが、BMW史上最高峰のマルチシリンダーと称される3.2リッター直6「S54」エンジンの進化版。最高出力はノーマルから17馬力引き上げられた360馬力。ですが、このエンジンの最大のトピックは、やはり巨大なカーボン製サージタンク。アクセルペダルを深く踏み込んだ瞬間、このカーボン製のハコがパルスとなって共鳴し、レーシングカーそのものの吸気音がキャビンまで届くのです。
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そして、トランスミッションは当時の最先端だったシングルクラッチ式のセミAT「SMG II」のみを設定。現在のデュアルクラッチ(DCT)のような滑らかさはなく、シフトアップのたびにガツンと背中を蹴飛ばされるような変速ショックが伴います。が、それすらも「今、俺はマシンを操っている」という強烈なアピールではないかと。
いずれにしろ、たとえ最先端のハイパーカーだとしても、M3 CSLの原始的、かつ野蛮ともいえるドライブフィールは決して味わえるものではありません。これこそ、まさにバイエルンのMらしさと呼んで差し支えないでしょう。
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さて、誕生から20年以上を経たいま、このE46 M3 CSLはコレクターズアイテムとして争奪戦が繰り広げられている模様。オークションでは3000万円を超える超プレミア価格で取引されることも珍しくありません。新車価格が1150万円(日本仕様)だったことを考えれば、驚異的な値上がりっぷり。
それも当然といえば当然で、大半のクルマが電動化や自動運転、そしてエコという大義名分に向かって突き進むなかで、「純粋な内燃機関と、五感を刺激するアナログな運転感覚」は二度と手に入らないから。今となっては、電子制御に守られ、誰が乗ってもイージーに速い現代のスポーツカーに対する、強烈なアンチテーゼとなったE46 M3 CSL。BMWが「駆けぬける歓び」という言葉に文字どおり命を懸けていた、あの幸福な時代の記憶を閉じ込めた、最後のタイムカプセルなのかもしれません。
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