エンジンも足も極上! 黒沢元治を唸らせたBMW M3ツーリングの凄みと「唯一の要望」【ガンさんこと黒沢元治のDPQ:BMW M3コンペティションM xDrive ツーリング編】

足は相当固められているが上質さが感じられる仕上げ

 BMWのスポーツモデルとして長い歴史を持つM3。現行型は歴代初となる、ツーリングと呼ばれるワゴンボディをラインアップしたというので評価したい。

 ダンパー特性も変化するドライブモードを、コンフォートに設定して走り出す。極低速で、駐車スペースからワインディング本線へと向かう路面の荒れたアクセス路を流すが、相当に足が固い。数限りない試乗経験から言えば、この状態ならスポーツモードと呼ぶのがふさわしいほどの固さである。

 ワインディング本線に入りアクセルを踏み込むと、530馬力/650N・mの3リッター直6ターボは、そのスペック数値に偽りない強烈なパフォーマンスを見せる。特筆すべきは回転振動で、BMWの伝統でもあるシルキー6は健在。純エンジンでこれだけのパワーを出すには相当な爆発エネルギーを発生するものだが、それにもかかわらずこの上質な回転は、さすがBMWと感心せざるを得ない。

 先ほどの固い足まわりについて分析しつつ走行していたのだが、ワインディングを走り込んで納得がいった。まず気がついたのは前後の重量バランスに優れた走りだということ。走行後に担当編集に確認したところ、前後軸重は940kg:920kgで50:50に近い数値だ。そしていまのM3は4WDである。ターボも含めて重く長い直6エンジンをバランスよく積むためには、フロントミッドにする必要がある。だが、4WDゆえにフロントデフなどがあるため、エンジンの搭載位置を高くせざるを得ない。ボクの経験上、300kg近いであろうエンジンが高い位置に積まれれば運動性能にマイナスの影響が出る。それを抑えるために、足を固くする必要があったということだ。

 ただし、固く、ほぼストロークしないようなサスではあるが、ガツンというような下品な入力はない。ブッシュなどでうまく吸収しているのだろう、仕上げは見事なものだ。

 8速ATも素晴らしい。2-5速がクロスしたギヤ比は日本のタイトなワインディングにもマッチしており、じつに気持ちよく走行できる。加えてこれだけのトルクがかかった状態でも、変速ショックが抑えられて滑らかにシフトする点は高く評価できる。

 ブレーキはオプションのカーボンセラミックが装着されていたが、当然のように踏力に対する減速度のリニアさ、絶対的な減速度、コントロール性、温度変化による減速度の変化の小ささなど、すべてにおいて文句はない。

 最後になるが、高出力のエンジン、固い足まわり、そして高いグリップを発生するタイヤ、それらが発生する強大な入力をシッカリと受け止める高いボディ剛性は素晴らしいのひと言だ。

 まとめよう。もう最後とも言える純エンジンを楽しめるM3は、走りにおいて素晴らしいクルマであった。しかしながら、本企画の主旨であるドライビングプレジャーを考えると、もしエンジン搭載位置が下がり、おそらく車重が100kgは軽くなるであろう、FRモデルがあればもっと楽しいのではないだろうか?

 またトラクションなら4WDであるが、ボクの経験上、重心の低下や軽量化によって、高速サーキットであればラップタイムでもFRが上まわる可能性は大きい。願わくばFRで乗ってみたい、そんなことを思わせるクルマだった。

※本記事は雑誌「CARトップ2025年9月号」の記事を再構成して掲載しています


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