どこでも左側から追い越せるわけではない
第一に、左側に通行するだけの十分なスペースが確保でき、安全な速度・方法で通行できる状況であることが前提となる。歩道と車道がわかれていない道路では、白線の外側が歩行者の通行のために設けられた「路側帯」である場合がある(道路交通法第2条第1項第3号の4)。自動車は原則として車道を通行しなければならず(同法第17条第1項)、路側帯に車体を入り込ませて右折車を抜くことはできない。
右折待ち車両を追い越す目的で歩道に乗り上げて通行する行為も当然認められない。一方、道路左側の白線がすべて路側帯を意味するわけではない。歩道が設けられた道路の外側線など、区画の法的性質は道路の構造によって異なる。ただし、通行可能な部分であっても排水溝、電柱、駐車車両、自転車、歩行者などが存在する。サイドミラーが接触しそうな幅しかないのに、強引にすり抜けることは避けるべきである。
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第二に、交差点やその手前30メートル以内では、道路交通法第30条により、ほかの車両を追い越すために進路を変更したり前車の側方を通過したりすることが原則として禁止されている。ただし、自分が優先道路を通行している場合のその交差点は除かれる。道路交通法上の「追い越し」とは、進路を変えて前車の側方を通過し、その前方に出ることをいう(同法第2条第1項第21号)。
右折待ちのクルマの左側を抜ける行為はまさにこれに当てはまるため、優先道路上でない交差点の手前30メートル以内では、たとえ左側からであっても追い越し自体がそもそも認められない。この場合は、前車の右折が終わるまで待つのが正しい対応になる。優先道路上や交差点から離れた場所であれば追い越し自体は認められるが、前方から左折してくる車両や横断歩道の歩行者、左後方から接近してくる二輪車などへの注意義務は当然に発生する。
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第三に, 横断歩道などの手前30メートル以内では、道路交通法第38条第3項により、前方を進行している他の車両など(特定小型原動機付自転車などを除く)の側方を通過してその前方に出ることが禁止されている。また、第38条第2項は、横断歩道などまたはその手前の直前で停止している車両などの側方を通過してその前方に出ようとするときは、その前方に出る前に一時停止しなければならない。右折待ちのクルマの向こう側で横断しようとしている歩行者が右折車の陰になって見えない場合もあり、左から抜くのは極めて危険な行為だ。
以上のことから、右折のために道路の中央に寄っている前車を追い越す場合、道路交通法第28条第2項により、原則である右側通行ではなく左側を通行することになる。長年の慣習で「なんとなく違反かも」と感じていた人にとっては、意外な事実かもしれない。
ただし、この左側通行が認められるのは、優先道路上や交差点から離れた場所など、そもそも追い越しそのものが禁止されていない場所に限られる。加えて、そこでも安全が担保されていることが大前提であり、歩行者や自転車、対向車、そして当の右折車の動きを十分に見極めたうえで、安全な速度と方法で通行しなければならない。条文を知っていることと、安全に走ることは別の話だ。ルールに裏打ちされた自信をもちつつも、慎重さを失わないドライバーでありたい。