中国BYDの軽自動車EV「RACCO」登場でどうなる? 日本メーカーの「軽EV」の勝ち筋を考えてみた【吉田由美の美ーハー・カーライフ】 (2/2ページ)

BYD「RACCO」とホンダ「Super-ONE」が変える日本のEV

 というわけで、RACCOが「軽のど真んなか」に入ってきた一方、ホンダはちょっと違う方向へ進みました。それがホンダ「Super-ONE(スーパーワン)」です。

 と言いつつ、Super-ONEは、じつは軽EVではありません。「N-ONE e:」をベースに開発されましたが、全幅を1575mmまで広げたため、軽自動車規格を超えたAセグメントの小型EVなのです。

 全長3580mm、全幅1575mm、全高1615mm、車両重量1090kg。ホンダは「軽自動車規格を超えたFUNなEV」といっていますが、なぜ軽の枠から出たのでしょうか?

 ホンダによれば「Super-ONEの開発を進めるなかで、そのパワーユニットのポテンシャルを解放してみたいという発想が生まれ、あえて軽の枠から飛び出しました」とのこと。

 その象徴が「BOOSTモード」です。すでに”やんちゃなEV”には搭載されていることが多い機能ですが、通常時でも十分に元気なのに、専用スイッチを押すとモーターの最高出力が47kWから70kWへアップ! さらに仮想有段シフト制御や、排気音を演出するアクティブサウンドコントロールまで採用。「静かさ」ではなく、クルマと対話しながら走る楽しさをEVで表現しようとしています。

 しかも車両重量は1090kg! バッテリーは車体中央の床下に配置され、低重心化にも貢献しています。バッテリーは29.6 kWh 、WLTCモードの航続距離は274km。Super-ONEは1グレードで、価格は339万200円。ただし、2026年度のCEV補助金は130万円なので、補助金受給後の参考価格は209万200円。自治体によってはさらに補助が加わります。

 ここまで見ると、RACCOとSuper-ONEは対照的なのがわかります。RACCOは、「日本の軽規格のなかで、EVとしてどこまでできるか?」に挑戦したクルマ。Super-ONEは、「軽EVで培った技術を、軽の枠の外まで広げたらどうなる?」に挑戦したクルマ。

 この2台が同じ2026年に登場したのはかなり興味深いですね。

 というわけで、吉田由美的、日本の軽EVの勝ち筋を考えてみました!

1)「航続距離競争」を止める

 RACCOは最大320km。N-ONE e:は296km。サクラ&ekクロスEVは180km。確かに航続距離が長いのは、安心材料です。毎日30〜50kmしか走らないのであれば、180kmでも十分。320kmに追いつこうとすると、大容量バッテリーを積むことになり、車両価格も重量も増えてしまいます。

 軽EVの魅力は、本来「小さくて取りまわしがよいこと」。だからこそ、小さなバッテリー+軽量ボディ+低価格も立派な勝ち筋だと思います。

2)「軽自動車ならでは」を極める

 ここは日本メーカーが圧倒的に得意なところ。RACCOが面白いのは、両側電動スライドドアを採用してきたことで、これは「日本の軽」を研究した証拠です。だったら日本勢は、その先を行けばいいのです。「EVだから便利」なのではなく、「軽だから便利」を徹底することが重要。これは日本の生活文化そのものですから。

3)「軽EV=セカンドカー」を逆手にとる

 私的にはここが最大のチャンスと考えています。「近所専用の最高のクルマ」になればいいいと思います。買い物、子どもの送迎、通勤、病院、駅までの送り迎え、そして家に帰ったらコンセントを繋ぐ。さらにV2Hまで普及すれば、クルマが「走る蓄電池」となるので、それをもっとわかりやすく伝えることが大事かな。

4)「軽なのに楽しい!」

 これから絶対に必要なのがこれ! 「軽だから我慢する」のではなく「軽だから面白い」となれば、通勤用のエコカーなのに帰り道が楽しくなるはず。

5)そして「安心」

 ここは日本メーカーが絶対に負けてはいけないところ。EVの場合、ユーザーが気にするのは、「バッテリーは10年後どうなる?」「事故を起こしたら大丈夫?」「水没したらどうなる?」「冬はどのくらい走る?」「中古車になった時も価値は?」など。さらには、バッテリー保証や劣化率、急速充電性能に寒冷地性能に冠水時の安全対策、事故後の処置、リセールバリュー……。

 中国メーカーが「バッテリー技術」を武器にしてくるなら、これらを「わかりやすく見える化」し、日本メーカーは「長く安心して使えるEV」で勝負するのが勝ち筋ではないでしょうか。

「日本の生活に最適化された小さなクルマ」という文化そのものが、日本メーカー最大のアドバンテージ。RACCOの登場は、日本メーカーにとって脅威であると同時に、ものすごくいい刺激になったと思います。
いまこそ、「軽EVだからこそ、何ができる?」かを競う時代へ。ここからさらに魅力的な軽EVが登場してくるといいな。


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