ハイブリッド以外は実質売れなくなる
金利のある世界となり、インフレによって新車価格が上がっていくなかで、庶民でも手の届く純エンジン車には一定のニーズがあるはずだ。なぜ、純エンジン車には逆風が吹いているように見えるのか。
あえて単純化すれば、ガソリン価格の上昇と気候変動というふたつの課題への対応が求められることが、ハイブリッドの追い風となっている。
中東での紛争と、円安傾向の為替水準により原油価格は高止まりしている。コロナ以前の水準はおおよそ1バレル60ドル・1ドル110円だった。それが現在では、1バレル90ドル、1ドル155円ほどになっている。わかりやすいように原油相場を円換算すると、1バレル6600円から1バレル1万3950円と倍以上になっている。
製油所のイメージ画像はこちら
補助金のおかげでレギュラーガソリンの販売価格は170円/リッター前後に収まっているが、補助金で抑え込まれている価格である。補助金がなくなれば200円/リッターを超えることは確実というのは、多くのドライバーがうっすら感じているだろう。少しでも燃費のいいクルマに乗りたいというのは自然なユーザー心理である。
ランニングコストでいえば、太陽光を利用した自宅充電をはじめ、多様なエネルギーを利用できるBEVのほうが安価に収まるのは事実だが、まだまだBEVアレルギーのあるユーザーも少なくない。結果としてハイブリッドカーにニーズが集中し、メーカーもそれに合わせたラインアップにしていると理解できる。
トヨタ・カローラクロス画像はこちら
もうひとつ、ハイブリッドカーの拡大には、気候変動に関する政策に対応しなければならないメーカーの事情もある。
自動車関連のコラムではよく話題になっているので、ご存じの方も多いだろう。日本では2030年度より厳しいCAFE規制(企業別平均燃費基準規制)がスタートすることになっている。簡単にいえば、政府の定めた燃費基準を、各メーカーの販売台数とそれぞれの燃費性能を加重平均した値でクリアしなければならない。
新しい燃費基準は車重によって異なるが、たとえば1400kgのクルマは24.6km/リッター、1800kgでは21.1km/リッター、2200kgの場合は16.8km/リッターの燃費(WLTCモード)がクリアすべき基準となる。
この基準値を純エンジン車でクリアするのは非常に難しい。たとえば、トヨタ・ヤリスのFF車の車重と燃費は次のようになっている。
トヨタ・ヤリス画像はこちら
・1.5リッターガソリンエンジン車:1030kg 20.3km/リッター
・1.5リッターハイブリッドカー:1050kg 36.0km/リッター
参考までに、2030年度新燃費基準において車重1000kgのクルマは「27.3km/リッター」という燃費性能が求められる。ヤリスの車重であれば27.0km/リッター以上の性能は必要といえる。ヤリスの純エンジン車の20.3km/リッターという燃費性能は、ガソリンエンジン車としては優秀だが、新しい基準には遠く及ばない。
2030年度に実施予定のCAFE規制下においては、ハイブリッドカーでなければ販売することが難しいことは明らかだ。自動車メーカーというビジネスの持続可能性のためには、“最低でもハイブリッド”であることが求められる。現在の「純エンジン車の廃止とハイブリッドの拡大」は、そうした文脈で捉えるべきだ。
ホンダ・シビックe:HEV画像はこちら
CAFE規制を余裕でクリアする車種が大量に売れていれば、純エンジン車を販売する余地は生まれるが、現在のような安価な純エンジン車は消えるだろう。内燃機関だけで走るクルマは、趣味性の強い、ある種の贅沢品と位置付けられるようになるはずだ。