在庫処分車と一線を画す惜別のスペシャルモデル
ファイナルエディションの性格は2タイプに分けられると前述したが、商品企画的な見方においても、ふたつに大別することができるだろう。
怒られるのを承知で、乱暴な言い方をすると、売れ行きが思わしくなく販売終了となるモデルに、ちょっとした装備やシリアルプレートを付けただけの最終処分仕様と言えるファイナルエディションも存在しないわけではない。しかし、本当に注目したいのは、安全性や環境性能などの規制に対応が難しいため、泣く泣く最後となるモデルに特別な性能を与えたタイプのファイナルエディションだ。
後者の好例が、ランサーエボリューションのファイナルエディションだろう。都合10世代を数えたランサーエボリューションの最後を飾るスペシャルバージョンとして企画された、この特別仕様車にはベースモデル(X)の300馬力から313馬力にパワーアップされた特別な2リッターターボエンジンが搭載されていた。
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ランサーエボリューションと長年のライバル関係にあったWRX STIの”EJ20ファイナルエディション”も、エンジンムービングパーツの重量を合わせた、バランスドエンジンが載せられていた。いずれにしても、惜別の想いを特別なメカニズムというカタチで表現している。
エンジニア魂が送り出す持てる技術を投じた究極
2025年11月の生産終了に合わせて設定されたレクサスRC Fファイナルエディションにおいては、エンジンパーツの重量合わせを実施した高精度チューニングエンジンを載せているほか、リヤデファレンシャルも熟練の技術者が手作業でバックラッシュを調整している。こちらもエンジニアリング面のこだわりが感じられる特別な1台と言える。
ファイナルという名前こそ与えられていないが、2022年に販売されたNSXタイプSも特別仕立てのファイナルエディション的モデルと言える。ホンダ自身が「すべてのご愛顧に感謝を込めて」と表現したタイプSは、標準車と異なるフロントバンパーやリヤディフューザーを与えられ、V6エンジンと3モーターで構成されるスポーツハイブリッドのシステム最高出力は610馬力と、ベースモデルの581馬力から5%ほどパワーアップしていた。
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一般論で言えば、自動車という工業製品の開発は発売して終わりではなく、発売後もマイナーチェンジに向けた商品力アップや法規対応などを考慮した開発は続いている。そのなかで生まれた技術やアイディアは次期モデルに採用されることもあるが、モデル自体が終了となれば出し惜しみすることなく技術を投じたくなるのがエンジニア魂というものだ。こうしたタイプのファイナルエディションは、そのモデルにおける究極型といえる内容を持っていることが多く、冒頭でも書いたように熟成という価値もある。
そこまで手が入っていないパターンであっても、そのカタチのモデルを新車で購入できる最後のチャンスであることは変わらない。ファンであればファイナルエディションの購入を積極的に検討すべきだろう。
優良ファイナルモデルは希少性上々で買って損なし
最後のモデルという希少性から注文が殺到することの多いファイナルエディション。そのリセールバリューはどうなっているのだろうか。
過去の実績ベースでいうと、ランサーエボリューションやWRX STIのEJ20ファイナルエディションのようにメカニズムにまで手を入れたようなモデルは、コンディション次第では新車価格を超えるプレ値をつけていることが少なくない。そうでなくとも、ファイナルエディションと付くモデルはリセールバリューが高いまま維持されることも多い。つまり、買って損することは少ないと言える。
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これからの注目株は最後のエンジン搭載車
スポーツカーにはファイナルエディションという響きが似合う。GT500を走るワークスマシンの一角、GRスープラは2024年秋にファイナルエディションを発売した。気の早い話だが、GT500でライバル関係にある(あった)、日産フェアレディZやホンダ・シビックタイプRといった国産スポーツカーも将来的にはファイナルエディションを設定することをユーザーは期待するであろうし、マーケティング的には既定路線と言えるかもしれない。
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そして、日本政府や各メーカーが掲げている2050年カーボンニュートラルという目標が変わらなければ、これから「最後のエンジン搭載車」と呼ばれるモデルがどんどん生まれてくることになるだろう。
販売促進的には、どんなモデルであっても”ファイナル”をイメージさせることで希少価値をアピールして、しっかり売り切りたくなるかもしれないが、各メーカーにはファイナルエディションという肩書を安売りしないことを望みたいところだ。
※本記事は雑誌「CARトップ2025年4月号」の記事を再構成して掲載しています