走る・曲がる・止まるを完全支配。世界40社を虜にするメガサプライヤー「アイシン」の電動化技術を実走チェック (2/2ページ)

最新技術はすでに世界の市場で展開中

 次に乗ったのが三菱 エクスフォース。インドネシアで生産される東南アジア向けのコンパクトSUVであり、三菱がインドネシアで生産する初のハイブリッドモデルである。

 そのパワートレインはFFの2モーターハイブリッド。最大熱効率40%超の1.6リッターMIVECエンジンと組み合わされるハイブリッドユニットもアイシン製だ。

 三菱電機製モーターを採用したという、このハイブリッドシステムの特徴はハイ/ローふたつのギヤをもっていること。また、摩擦損失の少ないドグクラッチの採用、高速巡航時にはモーターを完全に切り離す機能をもっていることなどが挙げられる。かなり複雑な走行モードをもつ、シリーズ・パラレル式ハイブリッドというわけだ。同システムを日本で試乗できるというのは本当に貴重な機会だ。

 ハイ/ローのギヤをもつと聞くと、低速時にはローギヤで走ると想像するかもしれないが、そうではない。基本的にはハイギヤを使う設定となっている。なぜなら、そのほうがエンジン回転数を抑えることができ、燃費に有利に働くからだ。ローギヤを選ぶのは、強い駆動力が必要な急加速時や、エンジン回転数を上げて発電量を稼ぎたいときだ。

 今回の試乗では、メーターをにらみながら、ハイ/ローギヤが切り替わる瞬間を確認したが、それでも切り替えが感じられないほど走りはスムースだった。ドグクラッチを用いたギヤ切り替え機構という言葉や、初物のハイブリッドシステムといったイメージとは裏腹に、非常に高い完成度が感じられた。

 余談だが、エクスフォースのデジタルメーターは日本語表示モードが選べる。日本導入の予定はなさそうだが、インドネシア生産ということは基本が右ハンドルであり、この新しいハイブリッドシステムは日本でも大いにウケそうだ。

 続いて試乗したのはレクサスES。その量産仕様に採用されたAVS(可変減衰力調整ショックアブソーバー)の制御部分が、新技術のコアとなる。

 一般論としてAVSのような機能は、車両の各種情報からストローク速度などを演算し、それに応じて減衰力を最適化させるといった仕組みになっている。ただし、演算によってストローク速度を求める関係から、実際の動きに対してズレが生じてしまうのが課題だった。

 アイシンが開発した最新のAVS制御は、いわゆる生成AIを活用することで演算と実測のズレを圧倒的に解消しているのが特徴だ。今回の試乗では、従来技術と最新制御を切り替えて乗り比べたが、とくに乗り心地面での改善効果は明らかだった。

 なにより驚くのは、今ほど生成AIがブームになる前の段階で、プロンプト(指示文書)を書き、機械学習によって演算値と実測値のズレを補正したという事実だ。知能化にも強みのあるアイシンの研究者らしいアプローチが、量産技術に投入されているのだ。

 最後に試乗したのはトヨタRAV4。ハイブリッドカーには欠かせない回生協調ブレーキは、アイシン傘下のブレーキ専業メーカー「アドヴィックス」の手によるものだ。

 同社が「AHB-C」と名付けた回生協調ブレーキシステムの特徴は、低コスト・グローバル生産に対応したメカニズムを新開発したことだ。具体的には、ブレーキ圧を生み出す加圧源を大容量ギヤポンプから電動シリンダーに置き換えることで、ローコストと生産性向上を実現している。

 コストを抑えたからといって、その仕上がりが従来品と比べて見劣りすることがないのは、RAV4に試乗すればおわかりいただけるはずだ。期待どおりの性能を、安価に提供するということは、電動化の普及に一役買っている。


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山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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