シンガー・ポルシェにMine’sのGT-R。「動く芸術品」と呼ばれる最高峰レストモッドが異常なほど高価な本当の理由 (2/2ページ)

ボディもエンジンも内装も徹底的に作り込む

 そうしたコストを勝手に推測してみると、ドナーとなるベース車を別にして、分解&再整備で1000万円程度、ワンオフに近いカーボンパーツに2000万円程度、エンジンチューンも3000万円ほどは見込むべきで、インテリアはサクッとレザーで作り変えるだけでも1000万円、シートやメーターまでこだわればさらに1000万円とすると、ほぼ7000万~8000万円。ここに特注やら、細かな工賃をのせたら1億円なんてすぐに突破するのは明らかかと。

 また、日本国内に目を向ければ「ビルト・バイ・レジェンズ」によるスカイラインGT-Rも見逃せません。世界的なJDM(日本車)ブームの頂点に君臨するこのモデルに対し、彼らが注ぎ込むのは日本の「匠の技」そのもの。まず、30年以上前の歪んだボディを全分解し、最新の3Dレーザー測定器を用いて1mm以下の狂いもなくミリ単位での矯正に加え、この時点で補強もなされることはいうまでもありません。

 ここに、GT-Rの神様的存在である名門チューナー「マインズ(Mine’s)」が、職人の手作業で1機ずつ組み上げたエンジンを搭載。さらに内装は、最高級のスウェード素材が張り巡らされるとくれば、シンガーに等しく手間暇かけられているのがわかるはず。新車時を凌駕するともいわれる「世界一クオリティの高いGT-R」を生み出すための、途方もない時間と人件費。それこそが、数千万円というプライスタグの正体なのです。

 古きよき黄金期のデザインを愛しつつ、現代のスピードと快適性、そしてなにより「本物の狂気」を求める世界の富裕層にとって、これらのレストモッドはもはやクルマにとどまることのない、所有欲を満たす「究極の動く芸術品」に違いありません。一見すると莫大な浪費のようでありながら、ハイパーパフォーマーとしての実用性と、コレクションとしての高い資産価値を両立している点において、じつは極めて理にかなった経済合理性をもち合わせている。これこそが、「レストモッド=高価」という最大の理由なのかもしれません。


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石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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