若年・高齢の差は歴然な動体視力と夜間視力
ところが、戸塚が安心できたのは静止視力まで。以降の視力検査で年齢差をまざまざと見せつけられることになる。
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まず、”動体視力”。スポーツ全般でも求められる、素早く動くものを一瞬でとらえる視力だ。優れているほど安全運転にも有利に作用する。
部分的に欠けたCの文字が、モニター上を猛スピードで通過した際、どの部分が欠けていたかを回答する。下のグラフを見てほしい。グラフ内の灰色のゾーンが年齢の平均値だが、最高値をマークした古谷の反応速度=動体視力に対し、戸塚のそれは3分の1にも達していない。63歳なら最高300deg/s。その半分にも満たないということは、高速道路などで、高い速度域になるほど目が追いついていかないことになる。
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さらに戸塚を愕然とさせたのは”夜間視力”。明るい環境から、いきなり暗い環境に変わった際、目が見えるようになる(暗順応という)までどの程度時間を要するかの検査だ。昼間の運転でトンネルに進入した際などに必要とされる視力で、正常値は60秒以内。古谷のわずか34秒に対し、戸塚は計測不可で終了。
検査方法は、モニターが明るい状態から急に暗い状態に切り替わり、徐々に浮かび上がってくる●印が見えた時点で反応するというもの。恥を忍んで告白すると、じつは、戸塚には●印がまるで見えていなかったのだ。
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つまり、速く動くものに目がついていかない動体視力と合わせると、昼間の高速でトンネルに入ったときの戸塚は相当にヤバイということだ。
自分では気付いていない弱点をあぶり出す
続いて「性格・安全運転」のほか、「危険感受性」、「処置判断」、「重複作業反応」、そして「速度見越反応」の診断に移る。
シミュレーターを前に、テレビゲームを大の苦手とする戸塚は不安を隠せないが、とくにスピードを求められる項目などはなく、ヘッドホンから流れるアナウンスにしたがってテストは進んでいく。
その診断内容は感覚を頼りにクリアしていくゲーム風の設問や、RPGのように質問に回答していく項目などが設けられていて、バラエティに富む。設問も回答方法も多岐にわたるため、ここでは詳細は省くが、結果を見れば納得。それぞれが個々人の運転適性を詳細に導き出すうえで、的を射た設問であることが理解できた。
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戸塚と古谷の診断結界は、下のレーダーチャートに示されているとおり。各々のテスト項目の点数がすべてもっとも高く(5点満点)、正五角形であれば、適性が優秀で、かつ、すべてにおいてバランスのとれた、申し分のないドライバーということになるのだが……。
古谷の総合評価は、危険感受性だけやや優れていて、ほかはすべて平均点と、よく言えば「バランスのいい」結果となった。
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総評は、『運転時の冷静さは平均的なレベル。運転に要する行動機能でやや甘さが見られます。今後は運転にあわてたり、運転に自信を持ちすぎないように心がけましょう。人や車両の動きなどに目を配り、起こり得る危険さを想定しましょう。(中略)落ち着いて慎重な運転をするとともに、早めのブレーキなど事故防止をしっかり自覚した運転を心がけてください』とのこと。
ジムカーナで好成績を収める腕自慢の古谷に対しても手厳しいコメント。しかし、思い当たるフシがあるのか? 本人は神妙な面持ちだ。
走行速度の抑制が最善策
一方、高齢ドライバーの戸塚は、速度見越反応と性格・安全運転の2項目が高得点。ほかは平均点かそれ以下。レーダーチャートは、いびつな五角形を描いている。
『運転時の冷静さや慎重さについては、平均レベルよりも優れています。運転に要する行動機能でやや甘さが見られ、危険感受性が不足しています。(中略)安全に対する意識や考え方、危険を予測する能力、運転操作の適切さなどの面で平均的なレベルにあります。いっそう落ち着いて慎重な運転をするとともに、早めのブレーキなど事故防止を自覚した運転を心がけてください』という総評。
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言われてみれば、いちいちごもっとも。的確な分析・アドバイスに診断の精度の高さに驚かされる。今回の診断に立ち会っていただいたスタッフの方に、合わせてカウンセリングをお願いすると……「高齢の方に多く見られる傾向ですが、操作スピードが遅く、ミスも目立ちました。よく考えて操作されている場面があった一方、反応テストではせっかちな性格が見受けられました。また、暗さへの順応=夜間視力が低下しているようです。スピードを抑えて運転することが大事です」とアドバイスをいただいた。
今回取材した運転適性診断は、自分ではなかなか気づかない、あるいは認めたくない弱みや、強みを客観的かつ数値化して診断してもらい、それを今後の安全運転に活かすことができる、とくに高齢ドライバーにとって有効なシステムであることはたしか。
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思わしくない診断結果こそが改善すべきポイントなのだ。高齢・若年とも高評価のドライバーのほうが、むしろ慢心して事故を起こすケースが少なくないのだと言う。
※本記事は雑誌「CARトップ2025年2月号」の記事を再構成して掲載しています