大型トレーラーで「テニスボール」を跨ぐ!? ドライバーが「神業」を競う世界大会の裏側 (2/2ページ)

滑らかな運転は、安全性と燃費にもつながる

 今回の競技で印象的だったのは、車両を正確に操る技術だけでなく、いかに無駄な動きを抑えて走らせるかという点だ。

 水をこぼさないためには、急な加速や減速を避け、車体の動きを予測しながら滑らかに操作する必要がある。これは競技のためだけの技術ではない。実際の輸送でも、穏やかな運転は荷物への負担を抑え、乗り心地や安全性の向上につながる。

 また、急加速や不要な減速を減らし、先を読んだ運転を心がけることは、燃料消費を抑えるエコドライブの考え方にも通じる。車両の動きを理解し、必要以上に操作を繰り返さず、滑らかに走らせる技術は、日常の運行品質を高めるうえでも重要だ。

 大型トレーラでは、トラクターだけでなく、後方のトレーラがどのように動くかまで考えなければならない。目の前の操作だけに集中するのではなく、車両全体の動きを予測して、先まわりする。それが安全で効率のよい運転につながっていく。

日本代表が示した技術と、その先にあるもの

 今回の大会では、クオンカテゴリーで日本代表の秋山和範選手(鈴与カーゴネット静岡)が優勝と最優秀運転技量賞を受賞。また、同じく日本代表の森本秀教選手(柳井産業運輸)は、最優秀日常点検賞に輝いた。秋山選手は2025年の国内大会でもチャンピオンに輝いており、世界の舞台でもその実力を示した。

 大会の価値は、単に優勝者を決めることだけではない。世界各国のドライバーが互いの技術に触れ、自分自身の運転を振り返る機会になることにも大きな意味がある。

 さらに、出場した選手が職場に戻れば、その経験や技術が周囲のドライバーに伝わっていくことも期待できる。とくに若手ドライバーにとって、身近な先輩が世界大会で活躍する姿は、大きな刺激になるはずだ。「自分もあのようなドライバーになりたい」と思える目標があることは、技術の向上だけでなく、仕事への誇りにもつながるだろう。

 ドライバー不足が課題となっている物流業界にとっても、プロドライバーの技術や仕事の魅力を伝え、人材育成について考えるきっかけとなる大会ではないだろうか。

トレーラを操る仕事の奥深さ

 筆者自身、長年にわたり大型トラックやトレーラのハンドルを握ってきたが、今回の競技を見ながら、改めてトレーラ運転の奥深さを感じた。

 トレーラの動きを予測し、ミラーに映るわずかな情報から車両の位置を把握する。そして、必要なときには迷わず操作をやり直す。そこには、経験に裏打ちされた判断力と、車両全体をコントロールする技術が求められる。

 選手たちが真剣な表情で課題に挑み、難しい操作を成功させた瞬間には、見ているこちらまで思わず力が入った。そして何より、久しぶりに自分もトレーラのハンドルを握ってみたくなった。

 トラックドライバーの仕事は、単に荷物を運ぶことではない。大きな車両を安全かつ正確に操り、燃費や荷物への配慮も含めて、日々の輸送品質を支える専門性の高い仕事だ。

 UDエクストラマイルチャレンジは、そんなプロドライバーの技術と誇り、そして大型トレーラを操る仕事の魅力を、改めて感じさせてくれる大会だった。

●10月21日(水)実施 クエスターカテゴリー決勝

・優勝:インドネシア代表 Crisanto De Sousa Sanches 氏
・最優秀燃費効率賞:フィリピン代表 Wilson Moncada 氏
・最優秀運転技量賞:ケニア代表 Farhad A. Omar氏
・最優秀日常点検賞:インドネシア代表 Crisanto De Sousa Sanches 氏

●10月22日(木)実施 クオンカテゴリー決勝
・優勝 日本代表 秋山 和範 氏
・最優秀燃費効率賞:オーストラリア代表 Anthony Cassar 氏
・最優秀運転技量賞:日本代表 秋山和範 氏
・最優秀日常点検賞:日本代表 森本秀敏 氏

  

山城 利公(YAMASHIRO Toshimasa)

モータージャーナリスト/プロドライバー

二輪・四輪専門誌の編集を経て独立。現在はモータージャーナリストとして、各種メディアで取材・執筆、記事監修などをおこなっている。JAF公認レースへの参戦経験を持ち、現在は富士スピードウェイの技術委員としてモータースポーツの現場にも携わるなど、運転する立場から感じ取れる「現場のリアリティ」を大切にしている。物流分野では、幹線輸送のプロドライバーとして約20年間、200万km以上を無事故で運行。軽自動車から大型トラック、トレーラ、バスまで多様なモビリティを経験し、実務に裏打ちされた視点を商用車の取材・試乗評価に生かしている。


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