BEV販売の失速対策! 中国自動車メーカーがいま「複数ブランド」を展開するワケ

この記事をまとめると

■タイは中国市場に次いで中国車が多い国だといわれている

■バンコク国際モーターショーでは中国系ブランドの出展が目立った

■中国メーカーではメーカー内で量販ブランドと高級ブランドをわける傾向が強まっている

中国ブランドが考えるプレミアム戦略

 中国以外でもっとも中国車を見かける国ともいわれるようになったのがタイ。とはいっても、そのような傾向はタイ全土に広がっているというわけでもなく、バンコク首都圏に限った話といっていいだろう。

 先日閉幕したばかりの第46回バンコク国際モーターショーの会場では、14もの中国系ブランドがブースを構えた。メーカーではなく、あえてブランドとしたのは、タイにおいて複数のブランドを展開する中国系メーカーがここのところ、とくに目立っているからである。

 ちなみに、中国系ブランドでいち早くタイに進出したのはMGブランドで参入した上海汽車である。MGは、クルマ好きならばご存じのように、そもそもは伝統的なイギリスの自動車メーカーであった。しかし、2005年に中国・南京汽車が買収し、その後上海汽車が南京汽車を買収して、現在の姿となった。

 上海汽車は中国国内では複数のブランドを有しているが、タイも含め中国以外の地域ではほとんどのブランドをMG車としてラインアップしている。ただ、筆者が見た限りでは、インドネシアやタイではウーリン(上海通用五菱汽車)とMGは独立して展開している。また、イギリス統治下にあったインドではウーリンブランド車をMG車として販売し、地域ごとで扱いが異なっている。

 ほかに中国系にて単一ブランドで展開しているのはGWM(長城汽車)ぐらいとなるだろう。

 一方で、ジーリー(吉利汽車)では、ジーリーブランドのほかZEEKR(ジーカー/上級BEVブランド)、RIDDARA(リダラ/BEVピックアップブランド)、FARIZON(ファリゾン/BEV商用バン)をそれぞれ別としてブースを構えていた。長安汽車や奇瑞(チェリー)汽車も複数のブランド車を展示していた。

 また、中国系BEVブランド大手となるBYDオート(比亜迪汽車)も、筆者としてはタイで初めて、BYDとDENZAブランドのブースをわけていたのを見かけた。

 ひとつのブースで複数ブランドのクルマを展示するケースもあるのだが、あえてそれぞれ独立させてブースを構える動きも増えている印象だ。このような動きを見ていると、中国系なので主力はBEVとなるものの、量販モデルを中心にHEV(ハイブリッド車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)も目立ってきている。一方で、価格レンジの高い上級BEVブランドでは、当然富裕層が対象であり、ファッション感覚も手伝ってBEVをあくまでメインとし、PHEVを少しラインアップするぐらいの傾向だ。

 つまり、量販ブランドと高級ブランドを明確にわけた販売促進というものが目立ってきていると推測できる。モデルラインアップだけではなく、参入ブランドも増えれば、当然ながらある程度の交通整理をしないと消費者に混乱をもたらすのは必至。

 しかも世界的にBEV販売にブレーキがかかるなか、タイでもBEV販売はひと息ついた状況となり、乱売傾向も目立っている。なので、あえて高級ブランドということを強くアピールし、全面的な乱売を避けようという狙いもあるのかもしれない。

 レクサスLMがタイでも2代目となったものの、アルファードユーザーがレクサスLMに流れるといったことはないと聞いている。アルファードとレクサスLMユーザーの間には、明確なヒエラルキーの違いがあるようだ。

 どんなクルマでも買えるといった環境でもないことを考えると、消費者認知がそれほどなくとも、売る側から「高級ブランドですよ」と謳い、違いをアピールしているように会場を歩いて感じた。中国系ブランドの二極化が目立ってきているようである。


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小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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