この記事をまとめると
■トランプ大統領の就任によりアメリカでのBEV普及が大減速することは間違いない
■国家規模でBEV普及を推し進める中国であるがその普及率は50%程度といわれている
■BEVの広がりにより保険料の高騰が社会問題となっている国もある
中国がひとり気を吐くもなかなか進まないEVシフト
ドナルド・トランプ アメリカ合衆国大統領(以下トランプ大統領)が2025年7月4日に署名した新しい法案では、BEV(バッテリー電気自動車)購入時の最大7500ドル(約111万円)の税額控除が廃止されることになる(2025年9月末終了)。時間を遡り報道を追いかけると、2025年2月にトランプ大統領は全米各地の連邦政府庁舎に設置されているBEVの充電設備の廃止を命じている。
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トランプ大統領は、就任前の大統領選挙のときより公約として、BEV購入に関するインセンティブ廃止などを訴えていたので公約どおりに動いているわけだが、それでも2035年までにICE(内燃機関)車の販売を終了するとしているカリフォルニア州に対しても、2025年5月にアメリカ上院がこの規制を無効とする決議を行っている。いずれにしても、アメリカでのBEV普及が大減速することは間違いないようである。
世界的にBEV普及に熱心なのが中国だ。自動車産業育成に積極的となる中国政府だったが、ICE車では先を行く西ヨーロッパや日本、韓国との差はなかなか縮めることもできす、BEVでイニシアチブを獲ろうとしたのもその背景のひとつとされているし、自国内の大気汚染対策なども考えてのことだったようである。
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ただ、「これからはBEVだ」とコブシを挙げてから軽く10年が経とうとしているのに、中国国内でのBEV普及率は2024暦年締めでの年間販売台数ベースでも5割弱となっている。中国の政治体制を見ればもっとスピード感をもって100%近く普及していってもいいのでは……、と感じるなか2025年春に上海を訪れると、沿岸部で一級都市となる上海でも、意外なほどICE車が走っていて驚いた。調べてみると、BEVの任意保険料が高すぎるということがあるとのことであった。
BEV自体の購入についてはさまざまなインセンティブがあるし、上海市はナンバープレートの発給規制があり、しかもその規制下でナンバープレートをゲットする方法はオークション制となるのでナンバープレート取得費用もかさんでしまうのだが(平均で200万円弱との話もあり)、BEVならば無料で交付されたりもする。しかし購入後、つまり維持費用で保険料の高騰がハンパないというのである。