この記事をまとめると
■2025年6月11日に通称「トラック新法」が施行された
■トラック新法では運送事業の許可更新制導入や労働者の適切な処遇の確保などを明文化
■物流の2024年問題の解決へ向け大きく前進することに期待したい
物流の2024年問題解決へ国もようやく本腰!?
2025年6月11日、「改正貨物自動車運送事業法」と「貨物自動車運送事業の適正化のための体制の整備等の推進に関する法律」、通称「トラック新法」が公布、施行された。このトラック新法については、以前も本サイト(「この運賃で運べない? いくらでも他の業者はあるんだよ」の悪しき状況がついに解消されるか? トラックドライバーの賃金アップに繋がる「トラック新法」の中身とは)でもリポートしたが、5月27日の衆議院本会議では全会一致、6月4日の参議院本会議では参議院でも投票総数234のうち賛成232という圧倒的な数での可決。与野党一致での圧倒的な賛成多数によるトラック新法成立となった(参議院で反対票を投じた2名は誰なのだろうか?)。
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トラック新法の基幹となる法律「改正貨物自動車運送事業法」は
1)トラック運送事業の許可更新制の導入(5年ごと)
2)運送委託次数の制限(2次請けまで)
3)適正原価を下回る運賃・料金の制限
4)無許可事業者(白トラなど)への運送委託の禁止強化
5)労働者の適切な処遇の確保
の新たな5つのルールが柱となっている。以前のリポートではそのなかでもっとも重要な柱となる「(3)適正原価を下まわる運賃・料金の制限」をメインに解説したが、本稿ではほかの4つの柱となるルールについて探りたい。
1)トラック運送事業の許可更新性の導入(5年ごと)
今回の「トラック新法」以前に施行されていた「物流二法(貨物自動車運送事業法と貨物運送取扱事業法)」は、バブル真っ只なかの好景気の時代に物流業界の規制緩和のために作られた法律で、貨物自動車運送事業法(今回の改正前)は、トラック事業の規制を道路運送法から独立させ、運送業の免許制を許可制に切り替え、さらに路線トラックと区域トラック事業の免許区制を廃止した。貨物運送取扱事業法は運送取次事業を登録制、利用運送は許可制に変更。そして運賃も認可制から事前届出制に改めたものだった。
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この規制緩和は、バブルの渦中で日本の血流である物流が、車両とドライバーの不足により滞っていた状態を乗り越えるためのもので、この物流二法により新たに登録された2万社の運送会社と70万人のトラックドライバーがその車両&人手不足を解消させた。
そのころは好景気のため運賃もドライバーの報酬も高く、トラックドライバーはブルーカラーの花形、「稼げる職業」といわれていたが、施行直後の1991~93年にバブルが崩壊。景気が低迷するとともに、一気に増えた運送会社による過当競争が始まり、それは運賃の値下げ競争にもなり、そのしわ寄せは賃金低下と労働時間の増加という形でドライバーに降りかかった。
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また、一気に増えた運送会社の競争激化により、ドライバーの安全管理や労務環境、コンプライアンスが軽視されることとなった。それらの問題により現在のドライバーの高齢化・人手不足、ひいては物流の2024年問題が発生する結果となったわけだ。
このたびのトラック新法、改正貨物自動車運送事業法では、旧物流二法により自由化されていた運送事業に5年ごとの許可更新制を導入。更新時には法令遵守状況や安全管理体制、労働者の処遇改善など労務環境、財務の健全性などが審査され、基準を満たさない事業者は更新できず、事業の継続も難しくなるという。また、この許可更新制ではその事業者の運賃が「適正原価」を下まわっていないかもきっちりチェックされ、適正原価を支払わない荷主は是正指導の大正となるのだ。