この記事をまとめると
■ジャパンモビリティショー2025で「ハイエース・コンセプト」が初公開され注目を集めた
■マルチパスウェイ構想により複数の動力源を選択可能で現実的な市販化へ前進
■広大な空間設計と高い実用性で福祉や地域ケアなど多用途展開にも対応
いよいよハイエースのモデルチェンジも間近か
10月29日(水)から開催が始まったジャパンモビリティショー2025のトヨタブースでは「カローラ・コンセプト」が話題を呼んでいますが、お仕事グルマの展示ゾーンもそれに負けないくらい見逃し厳禁な内容でした。
■カヨイバコのコンセプトが次期ハイエースに結実した
ハイエースといえばトヨタのお仕事グルマの看板車両で、現行の200系シリーズは登場から20年も経過しているにもかかわらず、いまだに高い人気を誇っている車種です。
前回の開催で「カヨイバコ」シリーズのひとつとして展示されていたコンセプトカーが、今回の「ジャパンモビリティショー2025」では新たに「ハイエース・コンセプト」と名称を変えての展示となりました。これはコンセプトモデルの状態から市販化に大きく近付いたことを示しています。今回の展示で「ハイエース」の名称となったことで、いよいよ待望のモデルチェンジが間近か? と期待感が一気に高まりました。
トヨタ・ハイエースコンセプトのフロントスタイリング画像はこちら
この取材に際し、ハイエース・コンセプトの開発グループ長を務めたトヨタ車体デザイン部の木下さんに解説していただきました。
2023年の時点ではそのコンセプトをよりわかりやすく体現するカタチとしてBEVをベースとしていましたが、今回はマルチパスウェイのコンセプトを盛り込んだシャシーを基本に据えて、世界中のさまざまなシーンにフィットする複数のパワーユニットが選択できるようになっています。
トヨタ・ハイエースコンセプトのリヤスタイリング画像はこちら
とくにレシプロエンジンを選択肢に入れている点が大きなポイントで、次期ハイエースとして、これまで活躍していた場でそのまま使えるようにという配慮が盛り込まれたわけで、より現実感が増しています。
実際に展示車両を見てみると、「このスペースに内燃機と変速機が?」と思ってしまうほどミニマムなボリュームに驚かされますが、今回のコンセプトを実現するにはこのミニマムさが不可欠なため、エンジンを収める目処が立っていると見ていいのでしょう。
■仕事グルマの用途やあり方を根本から考え直して理想型を追求
この「ハイエース・コンセプト」の大きなコンセプトのひとつが、既成概念にとらわれないで考えられる最大の空間を確保して、床面もフルフラットにするというものです。これは実際の使用シーンを考えたときの理想の状態ですが、これまでは実現できていなかったことを踏まえると、けっして容易なことではないでしょう。しかも、これまで支持されてきたハイエースの用途からはみ出さないように、車体サイズは死守するという縛りがあるのです。
トヨタ・ハイエースコンセプトのラゲッジ部画像はこちら
しかし、いまのトヨタはひと味違います。「それが理想なら全力で実現に向き合え!」という意気込みが今回の展示から感じられました。実際に展示車両のフロアは完全なフラットを実現していて、さらに助手席を排して長尺の荷物(サンプルは3mの脚立)も収納できるようになっていました。ちなみにこの助手席を排したのは「ここまでできます」というデモンストレーションですが、それをオプションで選べる構成になる可能性は十分あるそうです。
脚立を積載したトヨタ・ハイエースコンセプト画像はこちら
この広大なスペースを実現するためには、先に触れたパワーユニットのブロックを極力前方に寄せて小さくまとめることが効いています。それに加えてシャシーの考え方も根本から再構築する必要があったと思われます。その結果、これが理想だと思えるカタチが実現されました。
このパワーユニットのブロックを前寄せしたことは運転席にもいい効果を及ぼしています。既存のキャブオーバータイプでは前輪の上に運転席があるため位置が高く、乗り降りが少し面倒という弱点を抱えていましたが、前輪が前に寄せられたことでシートの位置を乗用車並みにすることができたので、女性でも乗降に気を遣わずに済むという利点が生まれました。
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この運転席の基部を見ると、床と面一ではなく1段高くなっていることに気付きます。これは細かい荷物や道具などが転がってシート下に入り込んでしまうことを防ぐ配慮だそうです。
また、この展示車両では、床面や壁面、天井など要所には荷物固定のためのアンカーポイントが備えられ、助手席前部にはアタッチメントが装着できるパネルを用意、運転席の上部にはラック状の収納を装備。
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そして、これまで丸いままだった後輪のタイヤハウスは上面をフラットにして板などが安定して固定できるようにしてあったりと、室内の各所に使い勝手をよくするための工夫が詰め込まれているのを見ることが出来ます。これらは提案の例ですが、市販時に実装できるように進めているそうです。