この記事をまとめると
■ドラレコは単なる記録装置からドライバーをサポートする機器へと機能が拡張しつつある
■AI解析やサーマルカメラといった機能が搭載された製品がすでに製品化されている
■AIを活用したリアルタイム警告は事故防止に直結する装備として期待ができる
記録機器から安全装置へ
ドライブレコーダーは2000年ごろから事業用車向けに登場し、2010年ごろから広く一般に普及し始めたといわれている。とくにあおり運転が問題視されるようになってからは顕著で、2024年の調査では普及率が50%を超えるまでに市場が拡大した。いまではナビゲーションをも凌ぐ、カー用品アフターマーケット業界の牽引役に成長している。
発売からしばらくは万一の事故に備えるグッズだと認識され、いつ起こるかわからないことのためにお金をかけたくないドライバーも多く、普及率は頭打ちであったという。しかし、常時録画機能が一般に使用されるようになってからは、「ドライブの記録」といった嗜好的用途に新たな価値を見出す人が増えたのである。
この成功例を受けて、ドライブレコーダーは付加機能を増やしていった。その代表的なものが360°録画や盗難防止機能であろう。映像ではハイビジョンやフルハイビジョンが当たり前となり、いまでは4Kや8Kといった高画質のものまで登場している。
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業務用では、記録画像を分析するソフトの提供や、映像データのオンライン送信機能の付加などといったことが行われ、ドライバーの安全運転指導に利用されるようになった。このように、ドラレコは単に万が一の事故を記録するというだけではなく、記録映像を活用する機器に進化を遂げたのである。その機能をさらに向上させることを可能にしたのが、AIとサーマルカメラだ。
強力なセンサーとして期待されているのがサーマルカメラである。霧や街灯のない暗闇のなかでは、一般のカメラではまわりの情報を捉えられないことがある。サーマルカメラは熱感知機能をもち、視界の悪い場所でも映像化が可能になるというものだ。
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ドライバーがどのような運転をしているかということは、記録を見れば一目瞭然である。安全運転指導はそれをもとに運転のどこに問題があるのかということを、ベテランの運行管理者が判断して講習や個別指導をするといった方法をとる。ただ、このやり方では問題がある運転を、いったん見過ごすことになってしまう。
しかし、ドラレコにAIを組み込んでリアルタイムに運転指導を行えば、事故を防げる確率が格段に向上することになる。すでにカメラはセンサーとしての機能を備えているから、必要な部分にそれを設置するだけでデータを得ることができるのだ。従来のドラレコのように車両の前方や後方はもちろんのこと、ドライバーにカメラを向ければその表情や姿勢も捉えることができる。
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これらの映像をAIが解析する場合、車外情報であれば通行する車両・自転車・人などといったもののほか、標識・信号・建物なども認識することができる。これらをもとに、自車が進行する方向に危険を察知すれば、ドライバーに警告を発することが可能になる。また、車内カメラであればドライバーの目の状態・頭の状態・姿勢などから、疲労や居眠りなどを感知することができて注意を促せる。
このように、次世代ドラレコにはAIや高感度センサーが組み込まれ、安全運転のリアルタイムサポート機能をもつようになっている。ドラレコの進化から、これからも目が離せない。