BMWがイケイケの波に乗って作ったコンセプト! 幻に終わったZ1の派生モデル「Z1クーペ」が今思えば激熱だった (1/2ページ)

この記事をまとめると

BMWの開発部門「テヒニク」は数多くのプロジェクトを手掛けた

Z1ロードスターをベースとしたZ1クーペがコンセプトモデルとして存在した

■Z1クーペのDNAを受け継いだモデルがその後に誕生した

名車「Z1」に存在した幻のクーペモデル

 BMWにとって1990年代は黄金時代だったといえるでしょう。そこにはFFコンパクトやSUVといった流行はなく、痛快なシルキーシックスや、羊の皮をかぶった狼などがひしめいていたのです。

 この隆盛を陰で支えていたのが、開発部門のBMWテヒニクでした。なにしろ1985年の設立から3年余りの間に140ものプロジェクトを完成させ、のちの名車ラッシュを生み出しているのです。ならば、キャンセルされたプロジェクトのなかにいまでも魅力的なクルマがあるのも当然といえるでしょう。

 1987年のフランクフルトモーターショーは、BMW黄金時代の幕開けにふさわしいものでした。戦後初のV12エンジンを搭載した750iのデビューをはじめ、最先端技術を満載したZ1ロードスター、大ヒットモデルのE30ツーリングなど、珠玉のラインアップだったこと、ご承知のとおりです。

 とりわけZ1ロードスターは、当初4000台の限定生産だった予定が、人気のあまり8000台以上も販売され、開発を担ったBMWテヒニクのステータスを爆上げしたのでした。

 想定外といえるほどの人気を得たZ1ですから、BMW首脳陣が後継や派生モデルを目論んだのも不思議ではありません。そこで、テヒニクが導き出したのがZ1クーペというアンサー。もっとも、名前だけ聞いたら「ロードスターの次はクーペって常道でしょ」と思いがち。ですが、テヒニクは単純にハードトップを載せるのは避け、クーペにリヤコンパートメントを追加したシューティングブレークを提案したのでした。なら、最初からシューティングブレークを名乗れよって感じですが、そこはドイツ人の考え方。我々に真意を測ることは難しいのです。

 ともあれ、Z1クーペのコンセプトモデルは、これまた黄金時代の波に乗ったもの。たとえば、キドニーグリルからクロームのフレームを省いた「スムージング」はのちのE36やE46に通じるアイディア。同じくヘッドライトの形状も、のちの3シリーズに一脈通じるもので、じつに新鮮なプロポーザルといえるでしょう。そして、印象的なフェンダーラインこそZ1のアイデンティティを伝えるもの。直線的でありつつ、力感や艶やかさはZ1譲りの特殊素材ならではの造形に違いありません。


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石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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