マイチェン大成功! プリウス顔で人気急上昇の「新型アクア」をデザインのプロが辛口分析

この記事をまとめると

■トヨタ・アクアが2025年9月1日にマイナーチェンジを実施

■デザインを大幅に変更し「ハンマーヘッドデザイン」を導入した

■キャッチコピーの「ノイズレス」をシンプルに上手く再現している

アクアにハンマーヘッドデザインを導入

 2025年9月1日にマイナーチェンジを受けたトヨタのアクアが大評判です。いわゆるハンマーヘッドタイプのフロントフェイスとなった同車は、「まるでミニプリウスみたいでメチャクチャかっこいい!」との声が多く寄せられているのです。では、本当にアクアは「カッコよく」なったのか? あらためてそのエクステリアをチェックしてみましょう。

●フロントフェイスの刷新で受注が殺到!

 今回のマイナーチェンジでは、ハンマーヘッドタイプのフロントライトと、一部グレードには左右を結ぶセンターランプが奢られました。流行といってしまえばそれまでですが、フロントフェイスを横一文字表現として、シャープかつワイドに見せる有効な手法です。

 これに伴って整理されたロアグリルはシンプルな横長形状になりましたが、これまた一部グレードに設けられたアクセサリーランプを含めた表情が、プリウスのそれによく似ているのが特徴です。さらに、リヤガラス部にはバックドアガーニッシュが追加され、リヤビューの質感向上とメリハリを感じさせるアクセントとなっています。

 もともと不人気車という存在ではありませんでしたが、この大幅改良による影響なのか注文が殺到し、11月末現在ではなんと受注停止となっている店舗があるとの話を聞くほどの評判ぶりです。

●オールニューまでの過渡期的スタイリング

 さて、このビッグマイナーチェンジですが、単に定例の小変更が「当たった」というより、個人的には前期型の軌道修正を敢行したものと考えています。なぜか? 現行のアクアは2021年に発売となりましたが、その数年前からのトヨタデザインは暗黒期にあったと思っているからです。

 当時は「キーンルック」や「アンダープライオリティ」といったデザインフィロソフィがよく聞かれていた時期で、とにかく表層的な造形による強引な「特徴作り」が目立っていました。

 たとえば、やたらに引き伸ばしたり引っ張ったりしたようなパーツ類や、説明的でいささかクドいラインなど「コレでどうだ!」といわんばかりの表現で、ボディ全体の構造ではなく、あくまで表面をこねくりまわしたスタイリングが主流だったのです。

 そんななかに登場した2代目のアクアも、初代がもっていた端正さは姿を消し、まるでチーズの塊を火に炙ったようなドヨンとした造形に。とりわけ、初代の安定感のある台形グリルとキリッとしたランプのフロントフェイスは、曖昧な形状のランプと締まりのない巨大グリルへと変化し、その深海魚の顔のような造形が人気を低下させたように思えます。

 一方、デザイントップにサイモン・ハンフリーズを迎えて以降のトヨタデザインは、いい意味でのシンプル路線が定着しつつありますが、今回の改良はその流れをフロントフェイス中心に急遽反映させた……といえそうです。つまり、キャッチコピーの「ノイズレス」は、現在のシンプル路線への合流を意味しているのです。

 もちろん、顔を大きく変えたからといって、スタイリング全体がよくなったワケではありません。サイド面やテールライトまわりの過剰な抑揚や曲線、まるで歌舞伎の隈取りのようなリヤのアンダーガーニッシュは相変わらず表層的なままです。

 ですから、もし何年か後に3代目が誕生するとすれば、そのときこそ最新のトヨタデザインによる、真の次世代アクアを見ることができる筈なのです。


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すぎもと たかよし SUGIMOTO TAKAYOSHI

サラリーマン自動車ライター

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筒井康隆 /三谷幸喜/永六輔/渡辺貞夫/矢野顕子/上原ひろみ

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