この記事をまとめると
■ブガッティがVWグループから完全離脱して新体制となる
■ポルシェは自身の業績悪化によって所有するブガッティ・リマックの全株式を売却する
■新ブガッティがの戦略がEVハイパーカー路線になるか内燃機関継続になるかに注目
四半世紀に及んだVWとブガッティの密月に終止符
ここ数十年で、ブガッティは「世界一速くて世界一美しい究極のクルマ」を生み出すブランドとしての地位を完全に確立したといえる。それはもちろん、1998年にフォルクスワーゲン(VW)・グループに組み込まれたことが大きい。それ以前のブガッティは、志は高くとも経営は不安定で「幻のブランド」に甘んじていたが、VWの莫大な資本と技術が一気にハイパーカー・ヒエラルキーの頂点へと押し上げた功績は偉大だ。
VW傘下で発売されたブガッティ画像はこちら
その後VWは、2021年にリマックとの合弁会社「ブガッティ・リマック」を設立。その株式の45%を子会社であるポルシェに所有させ、ポルシェとブガッティとリマックによる相乗効果でハイパーカー市場の支配を目論んでいた。
そんなブガッティとVWの関係が完全に終了する。2026年4月24日に、ポルシェが所有するブガッティ・リマックの全株式(45%)をニューヨークの投資会社であるHOFキャピタルに売却することを発表したのだ(ポルシェは22%を所有していたリマックの株式も売却)。これによりブガッティ・リマックは、完全にポルシェ、そしてVWの手から離れることになり、独自の道を歩むことになるという。
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今回のブガッティ・リマックの株式売却は、ポルシェ本体の業績悪化が大きな引き金となっており、ポルシェは自身の中核事業に注力するため、巨額な投資を必要とするハイパーカー事業からの撤退を選択した。かつて破産寸前だったブランドを救い、世界最強へと育て上げたブガッティを、別の子会社の不振で手放すことになるのは、なんとも皮肉な運命といえる。
さて、クルマ好きとして気になるのは、今後のブガッティの行方だ。
いくつかのシナリオが考えられるが、もっとも有力なのがEVハイパーカーとしての道を突き進むロードマップだ。ブガッティ・リマックの実質的なリーダーであるメイト・リマックは、自身の名を冠した「リマック」でEVハイパーカーというカテゴリーを開拓したともいえる人物。リマックはネヴェーラですでに2000馬力級のEVハイパーカーを市販化するノウハウをもっていることを証明している。それだけに、ブガッティのバッジをつけたネヴェーラ超えのEVハイパーカーが登場しても何ら不思議ではない。
ブガッティ・リマックのメイト・リマック画像はこちら
一方で、エンジンを存続させる道も消えてはいない。ブガッティ・リマックがブガッティのブランドで発表した新世代モデルのトゥールビヨンは、8.3リッターV16自然吸気エンジンにモーターを組み合わせた1800馬力のPHEVハイパーカーだったからだ。トゥールビヨンには、メイト・リマックの「ブガッティは時計のように、時代を超えても価値を失わないアナログな機械美を備えるべきだ」という哲学が反映されている。実際、メイト・リマックは、「ブガッティがリマックになることはない」とことあるごとに強調している。これは、ブガッティがただ速いだけのEVになることはないという意味だ。
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今回のポルシェの株売却により、ブガッティはVWという強力な後ろ盾を失うが、同時に同グループが抱えていたCAFE規制の縛りからも解放されることになる。これによって内燃機関を延命させるという選択もしやすくなるはずだ。
果たして、新たな体制で産声を上げるブガッティからはどんなモンスターがデビューするのか。そしてそれが、VWという大組織のなかでは実現できなかった狂気的なモデルであることを願いたい。くれぐれも、再び「幻のブランド」に逆戻り……という結末だけは避けてほしいところである。