この記事をまとめると
■スバルの新型BEVワゴン「トレイルシーカー」に試乗した
■700km超えの航続距離と進化したAWD制御の採用による進化が著しい
■トレイルシーカーは快適な長距離移動を重視した1台になっている
トレイルシーカーはスバルのBEVとして大進化を果たしていた
スバルが新たに投入したBEVワゴンのトレイルシーカーに試乗して、まず感じたのは、このクルマが単なるソルテラの派生モデルではないということだった。確かに基本プラットフォームやパワートレインはソルテラをベースとしている。しかし、走りの思想、パッケージング、そしてBEVに対する考え方そのものが大きく進化している。
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スバルは従来から、単なるスペック競争ではなく、人間が安心して移動できるクルマ作りを重視してきたメーカーだ。高速道路を真っ直ぐ走る安定感。雪道や悪路での安心感。長距離移動時の疲労低減。そうした、人間中心の価値観がスバル車には色濃く存在している。その思想を、BEVという新しい乗りものへどう落とし込むのか。それに対するひとつの答えが、このトレイルシーカーなのだろう。
まずボディサイズを見ると、全長4845mm、全幅1860mm、全高1675mm、ホイールベース2850mm。ベースとなるソルテラに対して全長を155mm拡大し、リヤオーバーハングを延長している。一方、ホイールベースは継承している。
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その効果は主に荷室空間に現れている。荷室容量は633L。ウーファー装着車でも619リットルを確保する。ソルテラ比では181リットル増という大幅な拡大だ。
実際にリヤゲートを開けると、その容量感はかなり大きい。スーツケース4個、ゴルフバッグ4個、ベビーカー、ドッグゲージまで積載可能という説明にも納得できる。さらに、単に広いだけではない。荷室横にはサイドポケットがあり、荷室床下収納も用意される。カーゴフックやアクセサリーコンセントも備わり、アウトドア用途をかなり真剣に考えているのがわかる。
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そして、このクルマの本質は、そこへBEVならではの新しい価値を組み合わせてきた点にある。搭載される駆動用メインバッテリー容量は74.7kWh。セル数は104セルへ増加し、定格電圧も391Vへ引き上げられた。FWD仕様は165kW(224馬力)、AWD仕様は前後167kWモーターによる280kW(380馬力)を発生する。0-100km/h加速は4.5秒で、数字だけ見れば完全にハイパフォーマンスカーの領域であるといえる。
だが実際に走らせると、このクルマは速さを誇示してこない。アクセルを踏めば確かに猛烈に速い。ゼロ回転から最大トルクを発生させることも可能なBEVらしく、一気に速度が乗る。しかし、そのトルクの立ち上がり方が極めて自然なのだ。
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電気自動車が登場し始めたころ、多くのメーカーはその瞬発力を競っていた。アクセルを少し踏んだだけで首が後ろへもっていかれるような加速感を演出し、それを先進性としてアピールしていた。しかし、トレイルシーカーはそうした誇張路線とは一線を画している。
アクセル開度に対する駆動力の出し方が非常にジェントルで、乗員に過剰な加速Gを与えない。しかも必要なときには、踏んだ量に応じてきっちりと加速する。つまり、制御に余裕をもたせることができているのである。これは単純なパワー競争から一歩進み、人間が長時間快適に移動するためのドライバビリティ重視へとBEVが進化し始めたということだ。