この記事をまとめると
■さまざまなトラックに乗ってきたドライバーは引き出しが多い
■長年の経験から身につけた技を使って荷下ろしなどをスムースに行っている
■トラックドライバーの仕事は走るだけではない
潜り抜けてきた場数が違うトラックドライバーの世界
長くハンドルを握ってきたベテランドライバーには、若い世代とは少し違う独特の勘と作法がある。単に運転が上手いというより、車両感覚、荷物の扱い、道の読み方、休憩場所の選び方まで、長年の経験が身体に染み込んでいる。とくに大型や中型、平ボディ、ウイング、冷凍車などを乗り継いできたドライバーほど、その引き出しは多い。
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まず、ベテランならではのあるあるでもっとも話題となるのがバックの精度だ。バックモニターやセンサーに頼る前から、ミラーだけで狭い構内に差してきた世代だけに、車体の角度、後輪の位置、荷台の振れ方を感覚でつかんでいる。コンビニの納品口、古い市場の狭い通路、工場の屋根付きバースなど、余裕のない場所でも一発で寄せることができるのがベテランの条件。しかも、ただ入れるだけではなく、リフトが入りやすい位置、荷降ろしの順番、雨の日に濡れにくい向きまで考えて止める。
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また、マニュアル車への思い入れも強い。昔は積み荷の重さや坂道に合わせて、クラッチとギヤを使いわけるのが当たり前だった。空荷のときと満載のときでは発進の感覚が違い、坂の手前では一段落として回転をあわせる。最近のトラックはオートマ化が進み、運転自体はラクになったが、ベテランのなかには、エンジン音と振動でクルマの状態を読む感覚が薄れることを寂しがる人もいる。
それに加えて荷物に対する感覚が細かいこともベテランならでは。パレット物ならラッシングの掛け方、ケース物なら段積みの崩れやすい方向、機械物なら重心の位置を見て、走り出す前から危ない積み方を見抜く。平ボディ経験者ならシート掛けのうまさにも差が出るところだ。雨を逃がす山の作り方、風でバタつかないロープの締め方、角に当たる部分の養生など、見た目は地味でも走行中の安全に直結する技術が多い。
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PAやSAの情報量も独特だ。どこは朝早くから食堂が開いている、どこは大型枠が埋まりやすい、どこは風呂がある、どこは深夜でも静かに寝られる、どこは出口に近い大型枠が取り合いになる。こうした情報が頭のなかに地図のように入っている。さらに、国道沿いの古いドライブイン、トラックが入りやすい町中華、早朝からやっている定食屋など、ナビには出てこない独自データベースをもっている人も多い。
道の選び方にも経験が出る。単純に最短距離ではなく、積み荷の重さ、道幅、右左折のしやすさ、坂のきつさ、時間帯の渋滞、納品先の入り方まで考えてルートを決める。昔から走っている人ほど、地図上では近くても大型では入りたくない道を知っている。逆に、遠まわりに見えても信号が少なく、流れがよく、結果的に早い道を選ぶこともある。
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武勇伝が多いのもベテランらしさのひとつだ。大雪で何時間も立ち往生した話、昔の峠越え、フェリー待ち、長距離便での連続運行、まだ携帯電話がない時代の連絡方法など、いまでは考えにくい話が出てくる。ただし、その多くは単なる自慢話ではなく、現場で困ったときの対処法や、無理をするとどう危ないかという教訓にもなっている。
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そして、外からは絶対にわからない部分だが、ベテランは人の見方が違う。荷主、倉庫担当、リフトマン、守衛、同業ドライバーとの距離感を知っている。どこで挨拶をして、どこで余計なことをいわず、どこで少し手を貸すか。こうした現場の空気を読む力は、運転技術とは別のベテラン技だろう。トラックの仕事は走るだけでは終わらない。積む、運ぶ、待つ、降ろす、人とやり取りする。そのすべてを円滑に進める勘が、高齢ベテランの強さになっている。