MTのフェラーリがベースモデルの3300万円高で限定復活! 約1億円でも「12チリンドリ・マヌアーレ」が安いといえる理由とは

この記事をまとめると

フェラーリがじつに14年ぶりとなるMTモデルの「12チリンドリ・マヌアーレ」を発表

■Hパターンゲートとクラッチペダルを備えるも中身は8速DCTという革新的システムを採用

■1499台の限定モデルで価格は59万ユーロ(約9700万円)だ

カリフォルニア以来14年ぶりのMT復活

 最新スーパーカーからマニュアルトランスミッション、いわゆるMTが消えてから、もうだいぶ時間がたった。もともとスーパーカーは速く走るためのパフォーマンスを追求し、それを美しいボディで包むことで成立してきたモデルだ。したがって、変速スピードも加速性能も、MTよりも圧倒的に優れるデュアルクラッチ(DCT)が登場すれば、それが採用されるのは当然。いまや、サーキットではMTが勝負になる場面はほとんどないのだから。

 これはフェラーリも例外ではなく、2006年に販売終了となった599GTBフィオラノ、同2009年のF430、そして2012年にカリフォルニアが生産を終えると、フェラーリのカタログモデルからMTは姿を消し、それ以降は全車パドルシフト付きF1マチックやデュアルクラッチへと移行している。

 しかし現在、中古車市場ではフェラーリMTモデルの価値が爆上がり中だ。新車では大半のモデルがF1マチックであったために、世界でわずか30台程度しか生産されなかったと言われている599GTBフィオラノにいたっては、状態がよければ1万ドル、日本円にして1億円を超える価格で取り引きされることもあるという。

 これを受けてフェラーリは、ついにMTモデルの復活を決めたようだ。2026年7月3日、フェラーリは、MTシフトを備えた「12チリンドリ・マヌアーレ」を1499台の限定で発売すると発表したのだ。

 しかもそのシステムがスゴい。最大の特徴は、Hパターンのシフトゲートとクラッチペダルがちゃんと存在することで、これは通常の12チリンドリにも搭載される8速DCTをベースにフェラーリが新開発した「マヌアーレbyワイヤ」というシステムを組み合わせたもの。ドライバーがクラッチを踏み、シフトレバーを操作すると、その動きを各種センサーが読み取り、電子制御によってDCTへ変速指令を送る。「MTを操作している感覚」はあるが、内部では最先端のDCTが仕事をしているというわけだ。

 そして、クラッチペダルも「飾り」ではない。フェラーリは、このシステムを極めてリアルに作り込んでいる。クラッチペダルは単なるスイッチではなく、踏み込み量まで細かく検知する。発進時には半クラッチ操作が必要で、操作を誤ればエンジンストールも起こる。また、停止時にクラッチを踏まなければ、ここでもエンストするなど、本物のMT同様の操作が求められる。ヒール&トゥによるシフトダウンや飛び越しシフトも可能で、フェラーリは機械式MTの「操る感覚」を徹底的に再現したという。

 さらにシフトゲートには、かつてのフェラーリを象徴する金属製ゲートを採用しているのも往年のファンを泣かせる演出だ。シフトを入れる際の「カチッ」という手応えや金属音まで再現するために、レバー内部の機構までが専用設計されているというから、こだわりが半端ない。

 また一方で、自動変速モードも備えているため、渋滞などではAT車として走ることも可能だ。アナログな楽しさと現代の利便性を両立した、新しいGTカーとなっているのもポイントだろう。

 なお、搭載されるエンジンは通常モデルと同じ6.5リッターの自然吸気V12。最高出力830馬力を発生し、9000rpmを超える高回転域まで一気に吹け上がるフェラーリ最後の自然吸気V12のひとつだ。そして価格は59万ユーロ(約9700万円)らしい。標準モデルから約20万ユーロ(約3300万円)も高価だ。

 かつて、F1マチックが登場したとき、誰もが手軽に楽ちんにフェラーリを運転できるとして市場は歓迎し、システムは一気に広まった。いつしかそれは当たり前のものになっていた。そしていま、再びMTによって「自らの手で操る」という体験が贅沢なものとして価値を持ち始めている。それだけに、フェラーリが新開発した「マヌアーレbyワイヤ」を搭載したモデルが、今後も他モデルで登場することは間違いないだろう。

 近年、フェラーリは初のEVを発表するなど電動化を進めている。が「フェラーリらしさとは何か」を問い直す動きも強まっている。その答えのひとつが、この12チリンドリ・マヌアーレなのかもしれない。


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