GT500クラスの秘密をNISMOが語る! 開発領域が少ないなかでライバルに差を付けるポイントとは (1/2ページ)

この記事をまとめると

■日産モータースポーツ&カスタマイズ株式会社にてメディア向け勉強会を開催

■“スケーリング”および“プレチャンバー”に関しての解説を行った

■狭い改造範囲のなかでさまざまな工夫を行っている

知られざるSUPER GTのマシン事情

 世界最速のGTカーと謳われるスーパーGTのGT500クラスでは、日産がZ NISMO GT500、トヨタがGRスープラGT500、ホンダがHRCプレリュードGTを投入するなど激しい開発競争を展開。その結果、各ラウンドで激しいバトルが展開されているのだが、そもそもレギュレーション上、共通部品の多いGT500クラスではどのような開発が行われているのだろうか? そして、GT500クラスの車両開発を語るとき、たびたび登場する“スケーリング”および“プレチャンバー”とは、どういうものなのか?

 7月15日、日産のモータースポーツ活動を担うNMC(日産モータースポーツ&カスタマイズ株式会社)で、JMS(日本モータースポーツ記者会)主催の勉強会が開催された。スーパーGTのGT500で日産系チームのマシン開発の指揮を執る同社のチーフモータースポーツオフィサー、木賀新一氏がGT500の具体的な開発のなかみであるスケーリングおよびプレチャンバーを解説してくれた。

 まず、現在のGT500クラスの車両規定のベースになっているものが、2019年にドイツ・ツーリングカー選手権の「DTM」と共通で採用された「CLASS1」だ。同規則における最大の特徴は開発コストの効率化を行うべく共通部品が採用されたことであり、共通のサスペンションを筆頭に、エアロパーツもデザインラインの下部まで共通部品を採用している。とはいえ、DTMはスプリント、スーパーGTはセミ耐久といったように、そもそもレースフォーマットが異なることから、2020年、スーパーGTではCLASS1の規定をベースに独自の変更を認めた現在の車両規則「CLASS1+α」を導入した。

 このCLASS1+αで認められた独自の変更点はレース環境に合わせた仕様変更で、スーパーGTではセミ耐久のフォーマットに合わせて独自の燃料タンクやエアコンを装着している。さらにタイヤ開発のためのセンサーの搭載や“プレチャンバー”など、エンジン燃焼室の外部点火も許容された。

 とはいえ、開発コストの効率化および性能の均衡化を図るべく、引き続き、ECUやクラッチ、フロントブレーキディスク、リヤウイングなど、52のアイテムで共通部品が採用されている。

 以上、簡単にGT500クラスの車両規則を説明したが、気になる独自開発について前述の木賀氏は「エンジンはもちろん、冷熱系の部品やラジエーター、インタークーラー、それにまつわる配管やレイアウトなどは自由に行えます」とのことだ。

 さらにGT500車両ではベース車両のサイズ変更を行う“スケーリング”が実施されているが、これにも規定があるようで「まずはスケーリングで基準車に合わせて形を決めるんですけど、DTMのときに制定されたルールがあって、指定されたステップで量産車のボディをモディファイしていきます。まず基準車の横から見た形を、ある枠のなかにいれて、フロントの形を作り、そのまま全長を引っ張るような感じで伸ばしていきます。その後、フロントウインドウの角度を27.5度に合わせる形で合わせていくんですけど、ロールケージの位置やドアの位置に合わせていき、その後はリヤを伸ばして、今度はフロントを縮めたりといくつかのステップを繰り返しながら形を決めていきます」と木賀氏は語る。

「スケーリングの過程でクルマ全体が前傾姿勢になるところがあるのでアライメントをとって直してみたり、最初に全長を引き伸ばしたときに縦横比が変わってしまうので、それを合わせるために最初に戻してやり直したりと、何回もいろんなことを繰り返しながら微調整を重ねて行って前後方向のシルエットが完成します。上下方向は強制的にデザインに合わせてデフォルメし、タイヤの開口部の形を決めて、それに横のフェンダーのアーチをくっつけてスタイリングが完成します」と木賀氏は補足説明する。

 こういったスケーリングの結果、GT500のZはベース車両に対して全長で260mm拡大、全高で165mm低下、全幅で105mm拡大されたスポーティなボディに仕上がっているのである。

 ちなみにエアロダイナミクスについて木賀氏は「自由に開発できる部分はフリックボックスとラテラルダクトになりますが、これまで2年ごとに行えた変更が、2026年から4年間は凍結になったので、かなり長い時間をかけて開発しました。ダウンフォースの目標値を決めて開発しましたが、1戦目、2戦目を見る限り、目標値には達していると思います」とのことで、まずまずの仕上がりとなっているようだ。


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廣本 泉 HIROMOTO IZUMI

JMS(日本モータースポーツ記者会)会員

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