被害者の「ケガもないし大丈夫です」で立ち去るとアウト! 軽い事故でものちに「ひき逃げ犯」になるケースは多かった (1/2ページ)

ひき逃げも当て逃げも故意による重罪

 ここ最近、子どもが巻き込まれる交通事故が立て続けに報じられている。故意ではなくても、接触して逃走したり、事故車内に置き去りにしたりと、耳を疑うケースが続いている。それに限らず、車線逸脱や逆走で他車に接触しながら、その場を立ち去るといった悪質な運転の様子もニュース番組などで日々目にする。

 もちろん、以前からそうした行為自体は存在している。いわゆる「ひき逃げ」や「当て逃げ」だ。最近、発生件数が増加したり、内容が悪質化したりしている印象を受けるのは、ドライブレコーダーや防犯カメラの普及で表面化することが多くなっているからだろう。いずれにせよ、悪質な行為に変わりはない。

 では、ひき逃げや当て逃げと判断される法律的根拠とは何か。交通トラブルに関する相談も多く受けているベリーベスト法律事務所の齊田貴士弁護士にうかがった。

「まず、道路交通法に基づく事故報告義務違反が発生します。軽微な物損事故などであっても、必ず警察に通報しなければなりません。次に、救護・危険防止義務違反です。事故現場の危険防止や、負傷者の救護をしなかった、ということになります。事故だけなら基本的には過失とみなされますが、違反行為は故意犯ですから重く処罰される傾向があります」

 当然ながら、たんなる事故の場合より罰則は厳しい。「人身事故そのものは、自動車運転致死傷罪が成立し、7年以下の拘禁または100万円以下の罰金ですが、救護・危険防止義務違反には10年以下の拘禁または100万円以下の罰金が課されます。過失による物損事故の場合でも、道路交通法上の危険防止義務違反があれば1年以下の拘禁または10万円以下の罰になります。さらに、事故報告義務違反には、3カ月以下の拘禁または5万円以下の罰金が課されます」。

示談をこじらせるほど重くなる処罰

 免許の点数についても、危険防止措置義務違反は5点、救護義務違反は35点が追加されるうえに欠格期間も発生する。しかも逃亡のデメリットは直接的な罰則や処分だけではないと、齊田弁護士は語る。「示談が成立しにくくなります。被害者感情として逃げた犯人を許そうとは思えませんよね」。

 万が一でも加害者になった場合、示談は非常に重要となる要素だ。

「量刑の決定にはある程度、裁判官の裁量がありますが、これ以上の処罰を求めないという旨の示談書があれば、事故次第では不起訴になる可能性が増します。いっぽう、逃走すると示談しにくいだけでなく、行為態様が悪質であるとみなされて、量刑が減免されにくくもなりますし、そもそも道路交通法の違反行為は示談の有無に関係なく罰せられます。どんなに軽微であっても、事故が発生したらすぐに通報し、適切な処置を行うことが重要です」

 ちなみに、文中の「拘禁」という言葉は、2025年6月から、これまでの懲役と禁錮に分かれていた刑罰を一本化したもの。従来よりも更生に重きを置くとされるが、刑務所に収監されることに変わりはない。そんなことにならないよう、万が一事故の加害者になってしまった場合には万全の対処を心がけたい。

ドラレコ・防犯カメラ……録画が動かぬ証拠

 それでも、ひき逃げや当て逃げが後を絶たないのはなぜか。もちろん、まさかの事故に気が動転して思わず逃げてしまった、という場合も多いのだろうが、いわゆる”逃げ得”を見込んだ姑息な行為もありそうだ。これは、事故そのものの処罰から逃げ切るだけでなく、罪を重くする飲酒などの発覚を逃れようという場合もあるだろう。

 しかし、齊田弁護士によれば、交通事故において逃げ得などということははまずありえないという。

「たまに、事故現場に目撃者を募る看板が出ていることもありますが、防犯カメラの数がこれだけ多くなり、Nシステムやドライブレコーダーも普及していますから、誰にも知られずに逃げ切ることは不可能と言っていいでしょうね。飲酒についても、携帯電話のGPSデータをたどれば足取りは追えますから、本気で警察が捜査をすれば、必ずわかってしまいますよ」

 しかもそういった行為は、過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪として、たんなる飲酒/薬物摂取運転より重く処罰される。逃げて事態が好転することは絶対にない。逃げれば逃げるほど、立場は悪くなる。それだけは、肝に銘じておきたい。

 もちろん、自分がそうした悪質なひき逃げを犯してしまうことなどない、と思っている人が世の中の大半だろう。しかし、思いもよらないカタチで、ある日突然ひき逃げ犯になってしまう、ということもない話とは言い切れない。


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