この記事をまとめると
■強力吸引車は液体だけでなく土砂や粉体まで吸引できる特殊車両
■強力なブロワで空気の流れを作り対象物をタンクへ運ぶ
■下水道や工場災害復旧など人力では難しい現場で活躍する
社会の裏側を支える縁の下の力もち
道路や工場で、バキュームカーに似た、大きなタンクと太いホースを備えた特殊車両を見かけることがある。これは「強力吸引車」と呼ばれる車両だ。名前のとおり強い吸引力をもち、液体だけでなく各種の粉粒体まで吸い込んで回収する、トラックに巨大な業務用掃除機を載せたような存在だ。
バキュームカーと聞くと、屎尿や浄化槽汚泥などの液状物を吸引して運搬する衛生車を思い浮かべる人が多い。一方の強力吸引車は、より幅広い対象物を扱うことを前提にしている。汚泥、土砂、工場設備に堆積した粉じんやスラッジ、製鉄所や発電所で発生する沈殿物など、人の手では回収しにくいものを短時間で吸い上げる。
乾いた砂や粉体を吸引できるタイプは見た目にも違いがある。バキュームカーが密閉式のタンクと真空ポンプを中心とした比較的シンプルな構成なのに対し、強力吸引車はブロワに加え、サイクロンや集じん装置、太い吸排気配管などを備えるため、タンク周囲に機器類が多く並ぶ。また、回収物を排出しやすいよう後部に大きなハッチを備え、タンクそのものがダンプする構造の車両も多い。そのため、強力吸引車は外観だけでもより重装備な清掃・回収機械に見える。
バキュームカー画像はこちら
仕組みの中心となるのが、大容量のタンクと強力なブロワだ。ブロワで大量の空気を吸い出し、ホース内に高速の空気流をつくる。その流れに乗せるようにして汚泥や土砂をタンクまで運ぶ。単に「真空で液体を吸う」というより、大きな空気の流れを利用して固形物まで運ぶところが強力吸引車らしい部分だ。
バキュームカーは真空ポンプでタンク内を減圧し、大気圧との差を利用してし尿や汚水などの流動物をタンクへ直接吸い込む方式が基本だ。これに対して強力吸引車は、吸引風量の大きさを生かして対象物を空気と一緒に運ぶため土砂や粉体なども扱いやすく、ホースを長く伸ばす現場でも威力を発揮する。
車体後部のタンク内では吸い込んだ物質と空気を分離し、空気側に粉じんなどが流れないよう集じん装置をとおして排気する。作業後はタンク後部のハッチを開き、タンク自体をダンプのように傾けて内容物を排出するタイプが一般的だ。このため、泥や砂のようにタンク内に残りやすい物でも効率よく降ろすことができる。
強力吸引車画像はこちら
ただし、なんでも吸えるというわけではない。吸引できる物の大きさや性質はホース径や車両の仕様によって異なり、粉じんを多く含む現場では適切な集じん装置も必要になる。また、土砂や汚泥は水よりはるかに重いため、タンクにまだ空間が残っていても積載重量の上限に達する場合がある。
活躍する場所は想像以上に多い。下水道や側溝の清掃、建設現場の立て坑、河川の浚渫、工場のピット清掃、製鉄所のスラッジ回収、発電所設備の清掃などが代表例だ。災害復旧でも、浸水後に残った泥や土砂、排水路に入り込んだ堆積物の撤去で力を発揮する。狭い場所や深い場所では、人がスコップで何度も運び出すより長いホースを伸ばして吸引したほうが効率的で、作業員の負担軽減にもつながる。
強力吸引車は見た目だけなら大きなバキュームカーだが、中身はかなり違う。液体から固形物までまとめて吸い上げる移動式の巨大掃除機と考えたほうがわかりやすい。街なかでは目立たない存在だが、道路、下水道、工場、建設現場、そして災害復旧まで、強力吸引車は社会の裏側にたまるものを片付けるため欠かせない特殊車両なのである。