この記事をまとめると
■ゲトラグは数々の高性能車のミッションを手がけたドイツの名門メーカー
■鍛造ギヤや高剛性ケースなどの技術によって軽量化と耐久性を追求してきた
■現在はマグナ・インターナショナルの一部門となっている
スープラやGT-Rを支えた名門
レカロにブレンボ、ナルディにアクラポヴィッチ……、そのロゴを見ただけで一目置かれる海外ブランドがいくつかあるが、トランスミッションでいえば、ドイツのゲトラグ(Getrag)が有名。
国産車でいえば、1990年、三菱がゲトラグ社と共同開発した5速MTをGTOに採用したのがパイオニアで、国産乗用車で初の6速MTを搭載したJZA80系スープラ(1993年)のミッションもゲトラグ製。スカイラインGT-RもR34になってゲトラグ製の6速MTを取り入れて、マニアックなところでは三菱のコルトラリーアート バージョンRにもゲトラグ製5速MTが選ばれている。
三菱GTO画像はこちら
本場ドイツではポルシェ911、BMW Mシリーズ、フォード・フォーカス(欧州フォード)、フォード・モンデオなどもゲトラグミッション搭載車だ。
その歴史は古く、1935年にヘルマン・ハーゲンマイヤーによって創業。そんなゲトラグ製のミッション、一体どこがほかのミッションと違うのか。
一番の特徴は、鍛造・削り出しギヤにこだわっていることだ。一般的なミッションのギヤは鋳型を使って作る鋳造タイプなのに対し、ゲトラグではまず鍛造で鉄の円盤を作り、それから旋盤で歯を刻んでいく製法を採用している。アルミホイールと同じで鋳造は生産性が高く、安価にできるが、肉厚になるので重量面ではネガディブ。いっぽう鍛造は手間とコストはかかるが、高密度で高強度・高剛性で、薄く軽くできる。
高性能スポーツカーのミッションに、ゲトラグ社製が選ばれてきたのも、この剛性と軽さを求めたため。日産スカイラインGT-Rの例でいえば、R32・R33の5速MTに対しR34のゲトラグ製6速MTは、ミッション本体だけで約3kgも軽くなっている。
日産スカイラインGT-R画像はこちら
これは鍛造ギヤだけによるものではなく、専用の高剛性ミッションケースが与えられたり、結合ボルトの強度、本数、締め付けトルクの向上、エンジンとの結合剛性をアップさせたことなどもプラスの要素で、さらに1速と2速はトリプルコーンシンクロ、3速、4速はダブルコーンシンクロになって、操作性とシフトフィールまで向上していた。
また、ゲトラグ用のミッションオイルは通常のものより粘度が低いサラサラした専用品か、ATF(オートマチックトランスミッションフルード)を使うことでも有名だ。
このように鍛造ギヤで高い耐久性で知られるゲトラグ製ミッションだが、一方でシンクロなど補修部品の供給がなく、オーバーホールができない(不具合が出たらアッセンブリー交換)という問題があったが、専門業者からリビルトミッションが手に入るようになった。
またMTのほかDCT(デュアルクラッチトランスミッション)も製造していて、三菱のランエボXやフェラーリ458イタリア、488GTB、ローマ、BMW M2、M4、メルセデスAMG GT、フォードGTなどのDCTがゲトラグ製だ。
フェラーリ458イタリア画像はこちら
そんな名門ゲトラグだが、10年前、2016年にカナダに本社があるマグナ・インターナショナルに吸収合併され、現在は「マグナ・パワートレイン」の一部門になっている形だ。