※本記事は雑誌「CARトップ2025年2月号」の記事を再構成して掲載しています
じつは高齢ドライバーより若年ドライバーがヤバい
近年、テレビや新聞の報道で頻繁に、大きく取り上げられるようになった高齢ドライバーによる危険運転、あるいは事故。
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記憶に新しいのは2019年に発生した「東池袋自動車暴走死傷事故」だろう。当時87歳の男性ドライバーがアクセルとブレーキを踏み間違え、クルマを暴走させて交差点に進入。歩行者・自転車をはね、計11人を死傷させた悲惨な事故だ(母子2名が死亡。同乗していた妻を含む9名が負傷)。高齢ドライバーの危険運転に対して厳しい目が向けられる大きなキッカケになり、以降SNS上でも「ジャマ」、「危険」、「運転をやめろ」といった罵詈雑言が散見されるようになった。実際、街なかでも高速道路でも、明らかに高齢と思われるドライバーの危なっかしい運転にヒヤヒヤさせられることがある。
では、本当に高齢ドライバーばかりが事故を起こしているのかといえば、事実と多少異なるようだ。下の表を見てほしい。令和5年の、免許保有者10万人あたりの事故件数を示したものだ。たしかに60歳以上から増加傾向が認められるが、それよりはるかに多いのは10代から20 代のいわゆる若年ドライバーだったりする。高齢化が進んで若年層が減っていていることも考えると、看過できない多さだ。
免許保有者10万人あたりの交通事故発生件数のグラフ画像はこちら
理由として運転経験の浅さや、無茶な運転をしがちといったことが考えられるが、高齢ドライバーを非難しがちな世代が、じつはもっとも危険性が高いことを理解すべきで、高齢ドライバーをひと括りで危険とする風潮や認識は改めるべきかもしれない。
身体能力の衰えを経験で補う高齢運転者
クルマの運転で大きくモノを言うのは経験値だ。ベテランドライバーの大半は、無意識のうちに他車の動きを読んで速度や車間を適切にコントロール。また、つねに安全に配慮し、無理・無茶はせず、危険を回避する術を自然と身につけている。つまり、若年ドライバーと正反対の運転特性と言えるかもしれない。
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ただし、高齢ドライバーの場合、こうした思慮深い運転の一方、問題視されるのが身体的能力の衰えだ。
野球やサッカー、バスケットボールなどのプロスポーツ選手の平均引退年齢は、30歳未満だと言われている。無論、競技自体ができなくなるわけではなく、ベストパフォーマンスが発揮できなくなるということだ。一般的なクルマの運転では、そこまでシビアな身体能力は求められないが、同様のことは言える。
加齢(=年齢を増すこと)によって徐々に視力や聴力は低下し、体力の衰えによって反射神経や俊敏性、敏捷性などが失われていく。たとえば、突然目の前でアクシデントが起こった際も視認・反応が遅れ、ハンドルを切ったり、ブレーキペダルを踏むなどとっさの回避操作が間に合わないことは十分に考えられる。
下の円グラフにもその傾向はよく現れていて、視力の衰えによるものと思われる安全の不確認や前方不注意、またハンドルやブレーキの操作ミスが事故原因の多くを占めている。
高齢運転者交通事故発生原因のグラフ画像はこちら
一方、多くの割合で高齢者に発症する”認知障害”が原因の事故も否定できないが、別の事例として分けて考える必要があるだろう。
何はさておき視力検査
「クルマの運転に自信がある」という人は多い。ベテランならなおさらだろう。「免許を返納したら?」と言われて「はい、そうですか」と素直に応じられるわけがない。
しかし、前項で述べたように、加齢によって運転能力が低下するのは避けようがなく、事故原因のひとつになっていることは間違いない。客観的に、正しく自分の運転能力を把握する必要はあるはずだ。
そこで、今回訪れたのが国内運送業の大手、宅急便でお馴染みのヤマト運輸。同社では”ヤマト・スタッフ・サプライ”という関連会社で、おもに運送/旅客のプロドライバーを対象とした「運転適性診断」も実施している。今回、その診断結果をもとに、高齢者と若年者の運転能力の差を検証してみることにした。
被験者は編集部で唯一、還暦をとっくに過ぎている戸塚。比較対象には弱冠24歳の新入部員、古谷を抜擢した。
若者代表の編集部古谷とベテラン代表の編集部戸塚画像はこちら
あくまで安全運転の適性を調べることが目的。勝ち負けではないのだが、新人の前でブザマな姿は見せられない。気合いを入れて診断に臨む。
最初は、「見えていなければお話にならない」運転でもっとも重要な視力機能の検査だ。老眼が進み、近くのものが、ひどくボヤけるようになったものの、昔から視力には自信のある戸塚。静止視力は最高値の「8」(0.8以上はすべて8で表示)をマーク。古谷もまた8でイーブン。40歳近い年齢差があっても、遠くにある、動いていないものを視認する能力に大差ないことに、とりあえずホッとする。