あえてハスラーに似せたところも! 軽ではできないことに挑戦したスズキ・クロスビーのデザイン (2/2ページ)

デザイナーのエゴよりも、お客さまの喜びを大切に

 渡邉さんはハスラーのインテリアデザインも手掛けており、じつはご自身の愛車もハスラーだ。ハスラーオーナーのミーティングにも、いちオーナーとしてたびたび参加しており、ハスラーを自分色に染めて楽しむさまざまなオーナーの姿に触れることで、デザインをするうえでのヒントや刺激をもらっているという。

「最近は、若い人たちがクルマへの興味を失いつつあると言われていますが、そうした状況はわれわれにも責任があると感じています。燃費などの効率を追うあまり、乗って楽しく所有してうれしいというクルマの魅力が薄れていたのではないかと思うんです。ほんのちょっとしたことでもいいからお客さまが楽しくなるような仕掛けを入れることができれば、クルマに対する関心の深さも変わってくるんじゃないかなと思います」(渡邉さん)

 自分好みのちょっとしたカスタマイズをしたり、自分なりに使い方を広げられたりする余地が、クルマへの愛着も深めてくれるはずだと語る渡邉さん。さらに後席ドアにはハスラー同様にふたつのボトルを置けるスペースが備わっている。

「こちらはグリップと合わせてブランケットやレジャーシートなどを丸めて挿しておくなど、お客さまの考え方次第で使い方をさまざまにアレンジできる部分です。こういったお客さまにとって便利で自由に使えるアイディアはクロスビーでも積極的に採用しました」(渡邉さん)

 デザイナーにしてみれば、「せっかくここまで違うデザインにしたんだから、ここだって違うデザインをしたい」と考えるのがごく自然なことだろう。むしろ、「1カ所も同じデザインがない」と言い切れる方が、セールストークにも使いやすい。それでもあえてこの部分を残したのは、デザイナーがいかにユーザーに寄り添っているかの表れと言えるだろう。

「それって、スズキのデザイナー全員に共通していることかもしれません。みんな、積極的に提案はしていくけれど、デザイナーのエゴになってはいけないとつねに考えています。クロスビーのデザイン開発でも、こんなことをしたらお客さまが喜んでくれるんじゃないか、ということを思い描きながら取り組みました」(塚原さん)

 押し付けがましいデザインではなく、お客さまが喜んでくれるデザイン。それはスズキ・デザインのポリシーであり、矜持であると言えるのかもしれない。新型クロスビーは、そんなデザイナーの想いを随所に見つけられるクルマと言えそうだ。


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