ミライの未来に暗雲! 究極のエコカーといわれた燃料電池車が成功できないワケ (1/2ページ)

ハードルの高い水素ステーションの開設

 燃料電池車(FCV)の普及が伸び悩んでいる理由は大きく3つある。1つは、水素充填のスタンド不足だ。そして2つめとして70MPa(メガパスカル)の水素タンクに充填するには、二酸化炭素(CO2)排出量を増やしてしまうという懸念もある。3つめは、走行距離において電気自動車(EV)に対する優位性が失われつつあることである。

 現在の水素ステーション数は、日本全国93カ所で、移動式の39カ所を含めても132カ所に過ぎない。一方、EV用の充電器は、急速充電が7600カ所、普通充電を合わせると2万9700カ所となり、これはガソリンスタンドの3万件に近い数だ。そんなにあるのかと驚くかもしれないが、EVに乗っていないと意識しないので気付かないだけだ。充電器の看板は、そこら中にある。

 さらに、水素ステーションが今後もなかなか増えない理由がある。それは設置費用の問題でも、法規制の問題でもない。水素ステーションを設けるには500平方メートル(約150坪)ほどの敷地が必要だ。なおかつ安全上、その上にビルを建てることはできない。水素は、もっとも軽い元素であり、万一漏れた場合、大気中に拡散させ濃度を薄める必要があり、それには水素スタンドに屋根や天井は設けられず、空へ解放できなければならないからだ。

 とくに地価の高い都市部の地主が、ビルを建てられない水素スタンドのために150坪もの土地を提供するとは考えられない。水素スタンドは地価の安い地域にしか増えて行かないだろう。そこは人口も少なく、結果、FCVはなかなか普及しない。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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