【試乗】待望の6速MTだけじゃない! ルノー・メガーヌR.S.カップはシャシーもブレーキも強化された衝撃の走り (1/2ページ)

2ペダル仕様よりも走りの性能に磨きをかけた

 4輪操舵システムである「4コントロール」を備えたルノー・メガーヌR.S.を初めて走らせたとき、そのコーナリング特性の秀逸さに舌を巻いた。ハイパワーなFFではパワーオン状態でコーナリングするとパワーオンアンダーステアを発生するのが常識。しかし4コントロールはステアリングを切り増しすれば後輪が60km/h以下では逆位相に操舵(レースモードでは100km/hまで逆位相!)され、アンダーステアを感じぬままコーナリングできてしまうという魔法のような体験をした。

 前輪の摩耗を嫌って可能な限り少ないステアリング操舵量で走らせるのがスポーツドライビングの極意なのだが、4コントロールは後輪を転舵させるためのスイッチという意味で積極的な切り増しを行う。それでもヨーレートが素早く立ち上がるので前輪が過剰に摩耗しない。理論的にはわかっていたことだが、実現するのは難しいことだった。

 近年、ポルシェやメルセデスAMG、ランボルギーニのハイパフォーマンスモデルに搭載され始めた4輪操舵システムは、後輪左右を独立したアクチュエーターで動かすことで高度な車両姿勢制御を可能にしたが、メガーヌの4コントロールは左右後輪をタイロッドで連結したシングルアクチュエーターの簡易的な構造でありながら同相最大1度、逆位相ではなんと2.7度という切れ角を与えつつ完璧にバランスさせ制御していたのが驚きだったのだ。

 そのメガーヌR.S.をベースに6速マニュアルトランスミッションを搭載し、シャシーを強化したメガーヌR.S.カップが限定モデルとして追加された。R.S.より強化されたというシャシーカップ(シャシーパッケージ)が与えられ、どんな走りを示すのか袖ヶ浦のサーキットで全開試乗する機会が与えられた。

 シャシーカップとして従来のR.S.から強化されているのはサスペンションとブレーキだ。まずサスペンションの変更だが前後のスプリングを強化している。その強化率はフロントで22%(35N/mm→43N/mm)、リヤは35%(31N/mm→42N/mm)にも及ぶ。

 またフロントアンチロールバーは1030N・m/°から1100N・m/°へと7%強化されている。これで前後のロールレイトは前2.9°/g、後2.6°/gとなり極めて小さなロール姿勢が維持されることとなった。

 またルノーの特徴的な技術である4輪ハイドロリック・コンプレッション・コントロール(4HCC)ダンパーは25%強化され、ダンパー内のバンプストップラバーは10mm延長されてダンパー底付き時の減衰特性を向上させてもいる。フロントアクスルには日本のJTEKT社が供給するトルセンLSDデフが採用され、サーキット走行に適したトラクション性能も確保されているのだ。

 ブレーキはハブがアルミニウム製でバイマテリアル化により軽量化(1.8kg)され、ハブへの熱伝導も抑えている。

 6速マニュアルトランスミッションは全段トリプルコーンシンクロが採用されており、サーキットでの高負荷にも耐えうる強度が確保されている。R.S.はドイツ・ニュルブルクリンク(ニュル)でのタイムアタックで知られるが、ニュルでは1000kmに及ぶ耐久テストの実施も恒例化しているという。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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