市場を切り開いた偉大なクルマが敗北! 「後出しじゃんけん」でバカ売れしたクルマ4選 (2/2ページ)

やはり総合力で圧倒するトヨタはどのジャンルでも強し!

3)ホンダ・インサイト/トヨタ・プリウス

 日本の自動車業界に大きなつめ跡を残した激戦が、2代目インサイトと3代目プリウスの対決であろう。時は2009年。

 ホンダは2月に2代目インサイトを1モーターのハイブリッド専用車として華々しくデビューさせたのだが、それから間もない5月、トヨタから3代目プリウスが登場。もちろん2モーターのストロングハイブリッドであり、1モーターのホンダのハイブリッドシステムとの違いをアピール。

 当時、2代目プリウスに乗っていたユーザーが、新鮮味を求めてインサイトに乗り換えた例はけっこう多かったと記憶しているが、ハイブリッド感の強さ(もちろん燃費も)でプリウスがリードするのは当然。2代目インサイトは2014年3月に静かに姿を消すことになったのである。

 もちろん、ホンダ・インサイトは約4年間の空白期間を経て、2018年12月に国内でもハイブリッド専用車として復活。ただし、プリウスとの戦いを避けた、クルマの王道をいくセダンタイプとなっている。

 今では2モーターのハイブリッドシステム=SPORT HYBRID i-MMDを搭載し、高級感、実燃費で20km/L前後はいく燃費性能の良さを売りにしている。スポーティーにも走れる走行性能、後方視界などで勝っているが、2019年5月の国産乗用車販売台数で1位になったプリウスを脅かす存在にはなっていない。2019年3月の販売台数はプリウスの15541台に対して、インサイトは1535台と約1/10なのである。

4)日産・ジューク&ホンダ・ヴェゼル/トヨタ・C-HR

 またまた、日産&ホンダとトヨタのコンパクトクロスオーバーモデルの戦いである。現行型のデビューはジュークが2010年6月ともっとも古く、今やフルモデルチェンジなしの9年選手。とはいえ、デビュー当時はクロスオーバーSUVの先駆けとなった、スタイリッシュな1台として人気を誇った。

 それに続いたのが2013年12月に発売されたヴェゼルで、クーペとSUV、ミニバンを掛け合わせたデザイン、使い勝手、硬派な走りっぷりで、コンパクトクロスオーバーSUVの人気を独占。2014~2016年の3年間連続で国産SUV販売台数NO.1の座に君臨した。

 で、後発車として2016年12月に登場したのが、トヨタの世界戦略コンパクトクロスオーバーのC-HR。プラットフォームは4代目プリウス同様、トヨタの最新の「TNGA」で、1.2リッターターボと1.8リッターHVを用意。

 ジュークもヴェゼルもスタイリッシュさが売りだったが、それらを圧倒する、それこそ社内外で賛否両論なほど斬新な、コンセプトカーさながらの奇抜なスタイリングが、出てみれば大ウケ。2017年8月に2トーンカラーボディが加わり、商品性はさらにアップ。結果的に2017年国産SUVの販売台数NO.1を、ヴェゼルに代わって獲得。

 2019年5月期では、国産乗用車販売台数で、スポーティーなツーリンググレードも加わったヴェゼルが15位、C-HRが16位と、ヴェゼルがわずかな差で逆転している。

 しかし2018年4月~2019年3月では、C-HRが全乗用車販売台数13位の72009台に対して、ヴェゼルは15位の59974台となっていた。C-HRの場合、ヴェゼルを圧倒するには至っていないが、ジュークの存在を(ジュークの古さもあって)一気に沈めてしまったことは間違いないだろう。

 こうして見ると、トヨタ恐るべし、である。個々、細部の優劣はともかく、商品性の総合力でリードするクルマをしっかりと出してくる。

 もっとも、繰り返すが「後出しじゃんけん」という表現は、ライバル車をじっくり研究したであろう(当然だ)他例と違い、戦いの熾烈さ極まったインサイト/プリウス対決に関しては当てはまらない。

 確かに発売時期は2代目インサイトが2009年2月、3代目プリウスが5月でプリウスが“後出し”のようだが、プリウスが2月にインサイトを見て何かできるはずもない。それぞれの開発のスタートは、ほぼ同時期と見ていいだろう。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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